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人権擁護法案の抜本的修正を求める声明

2005.3.17


2005年3月17日

自由民主党法務部会・人権問題等調査会合同会議 御中
自由民主党総裁  小泉純一郎 殿
民主党代表    岡田克也 殿
公明党代表    神崎武法 殿
日本共産党委員長 志位和夫 殿
社会民主党党首  福島瑞穂 殿

東京都港区愛宕 1-6-7
愛宕山弁護士ビル 306号
社団法人 自由人権協会
代表理事弘中惇一郎
紙谷雅子
田中宏
庭山正一郎


人権擁護法案の抜本的修正を求める声明


自由人権協会(JCLU)は、人権擁護を促進するために独立した効果的な国内人権機関の設立を求める立場から、従来、たびたび人権擁護法案に対し意見を述べてきました(2002年3月25日人権擁護法案に対する意見書同年11月6日NGO共同声明など)。人権擁護法案は、一旦廃案となりましたが、本年の通常国会へ上程が予定されています。その内容をみると、いわゆるメディア規制を凍結する修正がなされた他は、廃案となった人権擁護法案をそのまま踏襲したものとなっています。当協会は、今回の人権擁護法案について、以下のとおり看過できない3つの問題点があるので、同法案の抜本的修正を求めます。

1 人権委員会の独立性の制度的保障の欠如

今回の人権擁護法案でも、人権委員会は、法務大臣の所轄のもとで法務省の外局に置かれており、人権委員会の独立性は制度的に保障されていません。そもそも、刑務所、拘置所、入国者収容所などに身柄を拘束されている者に対する人権侵害が深刻であるにもかかわらず、これらの被害者が、法務省の管轄下にある人権委員会に対し、法務省を当事者として、訴え出ることができるのか多大な疑問を抱かざるをえません。

また、人権委員会は、独立した予算請求権や人事権がない点でも独立性が十分に担保されていません。 

従来述べてきたとおり、人権委員会は、少なくとも内閣総理大臣の所轄のもと、内閣府の外局に置かれるべきです。

2 報道機関等の取材・報道に対する特別救済手続の「凍結」存置

人権擁護法案では、報道機関やその業務従事者によるプライバシー侵害や名誉毀損の報道、生活の平穏を害する取材行為を、特別の類型として、特別救済手続きの対象とする一方で、これらの措置について「別に法律で定める日までの間はこれを実施しない」との「凍結」規定を設けています。

従来述べてきたとおり、これらの取材・報道に関する規制は、行政機関が報道機関の活動や報道内容を直接規制するものに他なりません。表現の自由は、自由な意見表明や情報の交換を可能とし、民主主義社会の根幹をなす権利であり、表現行為の一端を担う報道機関は、報道を通じ、市民にその考えや意見を培うために十分な情報を提供し、市民の知る権利に応えるという民主主義社会にあって重要な役割を果たしています。特別救済手続が、司法ではなく行政機関によって発動されれば、報道機関の表現行為を萎縮させることになります。  

今回の人権擁護法案の取材・報道に関する特別救済手続を「凍結」するという修正は、法律施行後の人権侵害の状況、これに対する報道機関等による自主的な解決に向けた取組の状況等を踏まえることとしていることから明らかなように、いついかなるときに、この凍結が解除されるか不安定な状態に置くものです。これは、表現の自由に対する萎縮的効果を及ぼす点で、廃案となった人権擁護法案となんら変わるところはありません。取材・報道行為を特別救済手続きの対象とする規定を、人権擁護法案から削除すべきです。

3 外国人に対する人権侵害への無力

人権擁護法案は、「国籍」による差別を対象外としており、外国人に対する人権侵害にはまったく無力です。在日コリアンを含む外国人は、例えば、「公権力の行使または公の意思の形成への参画に携わる職員になるには、日本国籍を必要とする」との理屈によって、公的分野において「国籍」による差別を受けてきました。同じ身分登録制度でありながら外国人登録証の常時携帯義務や、住居移転の届出義務違反に罰金という刑事罰を科すという日本人と異なる制度的差別もなされてきました。また、私的分野においても、入浴拒否、入会拒否、入店拒否、入居拒否などが、さまざま伝えられています。

人権擁護法案は、こうした「国籍」を口実とする差別に対し、何ら解決の道筋を示しておらず、外国人の人権擁護に有効に機能するとは到底思えません。

なお、今回の人権擁護法案は、人権擁護委員に「国籍条項」を設けず、外国人でも人権擁護委員になり得るため、外国人差別の事案を適切に判断することのできる委員を確保することが可能です。ところが、現在、同法案を審議している自由民主党法務部会・人権問題調査会合同会議において、「人権擁護委員は日本人に限定すべきである」との意見が出されたとの報道がなされています。この議論は、従来の法務省人権擁護局、地方法務局人権担当課の人権擁護委員の「国籍条項」を復活させるものにほかならず、私たちは断固反対します。

当協会は、人権擁護委員に国籍条項を設定すべきではないことは当然として、さらに上記1から3について抜本的な修正がなされるべきであると考えます。

国内人権委員会に関するこれまでのJCLU意見書・共同声明


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