
2005.2.21
2005年2月21日
| 代表理事 | 弘中惇一郎 |
| 同 | 紙谷雅子 |
| 同 | 田中宏 |
| 同 | 庭山正一郎 |
法務省は、警察庁に対し、性犯罪者の服役後の住所地について情報提供をすべきではない。
警察庁は、性犯罪者の服役後の住所地の把握について検討チームを発足させ、2005年1月13日、法務省と最初の協議会を持った。ここで、法務省は、警察庁が性犯罪者の服役後の住所地(居住予定地)情報を一般には開示しないと約束した上ではあるが、警察庁の要請に応じて同情報を提供することを了解した。また、かかる情報提供は、公益上の目的を担う行政機関同士の情報提供に該当するため、法律改正などの手続きを行わないとされている。
自由人権協会は、プライバシーと個人情報の保護並びに犯罪者の更生の観点から、この法務省から警察庁への性犯罪者の服役後の住所地情報の提供に強く反対する。
住所地は、人の生活の本拠であり、プライバシーとして最大限に守られなければならないものである。プライバシーの権利は、憲法の個人の尊重の原理から導き出される重要な人権である。たとえ、罪を犯した者であっても、いったん刑罰に服した以上、一般市民と同等のプライバシーの保障がなされなければならず、住所地情報を自己が欲しない他者に提供されないことへの期待は保護されなければならない。住所地情報の提供は、本人の同意なく個人情報を提供するという点と、犯罪の嫌疑が明らかでないときにあっても、性犯罪の前科のある者を警察の監視下に置く点で、同人のプライバシーを侵害するものである。
加えて、住所地情報の提供は、それのみではなく、必然的に法務省が保有管理している前科情報を合わせて警察庁へ提供することとなる。前科は、人の名誉、信用に直接関わる事項であり、前科等のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有しており(1981年4月14日最高裁第三小法廷判決)、住所地情報の提供は、前科情報の提供に他ならないという点でもプライバシーを侵害するものである。
また、住所地情報の提供により、性犯罪が起きるたびごとに捜査の対象となることで、本人の更生の意欲や努力を奪うことにもつながりかねない。
その上、法務省による住所地情報の提供は、性犯罪者は性犯罪を繰り返す危険が高いので、将来、性犯罪が起きた場合に備えて性犯罪歴のある者をあらかじめ把握しておく必要がある、という考えに立つものである。しかし、他の犯罪と比較して、性犯罪者の場合、同種事件の再犯率が高いのか、あるいはどの程度高いのかということが統計上の数字として何ら明らかにされていない。
このようなさまざまな検討を踏まえずに、基本的人権を侵害するような処置を講ずることが許されるはずがない。
仮に、統計的にも性犯罪者の再犯率が高いということが明らかであるなら、法務省はまず刑務所における性犯罪に関する矯正プログラムの実施状況を明らかにして、その改善策と限界を広く検討すべきである。そうした検討もなしに、安易に法務省が服役後の住所地情報を警察庁に提供することは、国民の同省への期待を裏切るものといえよう。
さらに、公益上の目的を担うことを理由に両省庁の合意により情報提供が可能とする考えは、プライバシーの権利に影響する個人情報の流用を、行政機関の間で幅広く許すことになり、プライバシーおよび個人情報の適正な管理にも違反する。かかる基本的人権に影響する情報提供を、国会の議論を経ることなく行うことは許されることではない。
よって、表記の通り声明する。
以 上