
2005.1.19
2005年1月19日
| 代表理事 | 弘中惇一郎 |
| 同 | 紙谷雅子 |
| 同 | 田中宏 |
| 同 | 庭山正一郎 |
当協会は、あらゆる人々の自由と人権を擁護するという立場から情報公開制度 の研究を行い、1979年9月に日本で初めて「情報公開法要綱」を発表し、以 来、情報公開制度の確立を提唱してきました。それから20年目にあたる 1999年に制定された「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(以下 「情報公開法」あるいは、単に「法」と言います。)は、我々の活動の成果とし て誇りに感じると同時に、未だ不十分な内容を多く含む未完成なものとの感も否 めませんでした。施行後4年の間の運用状況を振り返ると、後者の思いを強く感 じざるを得ません。
当協会は、この度、これまでの研究活動の成果と情報公開法の運用状況を検討 し、情報公開法の改正に関する意見をまとめました。同時に、すでに明らかにし ている「裁判所の保有する情報の公開に関する法律案」「国会の保有する情報の 公開に関する法律案」を改めて紹介し、わが国の情報公開制度のさらなる充実を 求めて意見を述べることとします。
「この法律は、国民主権の理念にもとづき、行政文書の開示を請求する権利及び 情報公開の総合的な推進について定めることにより、政府の諸活動に対する国民 の知る権利を保障し、もって政府がその諸活動を国民に説明する責務が全うされ るようにするとともに、国民の監視と参加の下に公正で民主的な行政の推進に資 することを目的とする。」
憲法の国民主権、表現の自由の規定などから、国民には知る権利が保障されてい る。現行法の掲げる政府の「説明責務」だけでは不十分であり、国民の知る権利 も明記しなければならない。国は、本法が施行されている現在でさえ、「同法が 人民に開示請求権を付与した制度的な目的は、もっぱら行政運営の監視及び透明 性の確保という公益を実現することにあるのであって、特定の個人の権利、利益 を認めたものではない。」と主張しており(当協会支援事件である最高裁の会議 録非公開処分を違法と判断した判決(東京地判2004年(平成16年)6年 24日・判例集未登載)中の「被告の主張」)、開示請求権を行使する国民の立 場を不当に弱めようとしていることなどからすると、法律への明記の意義は大きい。
情報公開法の運用においては、不存在処分が多く見受けられる。不存在処分の濫 用を防ぐためには、恣意的な判断を許さない文書管理・廃棄の仕組みの確立が必 要であり、そのためには、文書管理に関する法制度の整備を早急にすすめる必要 がある。
これは、内閣府・公文書等の適切な管理、保存及び利用に関する懇談会の報告書 「公文書等の適切な管理、保存及び利用のための体制整備について−未来に残す 歴史的文書・アーカイブズの充実に向けて−」においても、求められているとこ ろである。
同報告書は、「情報公開」と「文書の管理」とは車の両輪であるとも指摘するが (12頁)、少なくとも情報公開法の分野においては、同法施行令16条を法律 とし、文書の作成、保存等を法律上の義務とすべきである。
さらに、種類によって区分されている保存期間のうち「○年以上」の「以上」の 部分を削除し、削除後に明記されている確定的な保存期間を超える場合には、神 奈川県の場合と同様、すべて非現用文書として、国立公文書館に移管することと する。この場合、行政機関が保存期間を超えて当該行政文書を利用する場合に は、写しや電磁的記録をもって利用するとすれば、行政事務の運営上も不都合は ない。
また、保存年限に満たない現用文書についても、みだりに廃棄されることがない よう、国立公文書館法を改正し、国立公文書館において、これを保存、管理する ことができるようにすべきである。また、国立公文書館への移管前の文書につい ても、各省庁の管理権限の下、内閣府又は国立公文書館が一元的に管理するため の、いわゆる「中間書庫」を制度化し、みだりに廃棄されることがないようにす べきである。
個人情報について非開示事由を定めた法5条1号但書きを、次の下線部を加えて 改正すべきである。
現行法は、個人情報に関する規定の保護利益を「プライバシー」としつつも、 「『個人識別型』を基本として不開示情報を定めその中から開示すべきものを除 くという手法を採〔った〕」(「情報公開法要綱案の考え方」4(2)イ)。し かし、現行法の「開示すべき」範囲は狭すぎる。公共性・公益性の観点から公に すべき情報の開示範囲を広げるべきである。
すなわち、現行法においては、政策決定に極めて大きな影響を与えている審議 会等も、政府や大臣の私的な諮問機関と位置づけられると、その審議会等の記録 が「個人情報」として不開示となることが多い。私的諮問機関の委員など政府、 大臣等の依頼・委託を受けて政策に関与する個人は、公務員と同様の扱いとす べきである。
法人に関する非公開情報規定(法5条2号)については、いわゆる非公開条件付 任意提供情報を非開示とする同号ロを削除すべきである。
情報公開法5条2号イは、法人等情報のうち「権利、競争上の地位その他正当な 利益を害するおそれがあるもの」を非開示事由として挙げているが、このほかに 同号ロは「公にしないとの条件で任意に提供されたものであって、通例として公 にしていないなど、当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照 らして合理的であると認められるもの」を非開示としている。
しかし、行政指導によって、企業から情報の任意提供を受けることが常態化して いるわが国の実情からすると、非公開約束が濫用される危険性をぬぐえない。実 際、近時の裁判例の中には、非公開約束は口頭でよく、しかも黙示の合意でもよ いとの前提に立ち、比較的安易に「公にしないとの黙示的な合意があったと推認 することができる」と判断したものがあり(保険会社が金融庁に提供した情報の 開示の可否が争われた事案・東京地判2004年(平成16年)4月23日判 決・判例集未登載)、弊害が広がっている。
したがって、本号ロは削除すべきである。
防衛、外交情報、犯罪捜査等情報については、非開示とする支障等が発生するお それがあると「行政機関の長が認めるにつき、相当の理由があるとき」は不開示 となるとの定め方がなされている。かかる規定のため、過度に行政機関の裁量を 広く解する運用が行われている。
しかし、そもそも、防衛、外交情報こそ国民の利益に最も関連の深い情報として 民主的コントロールに置かなければならないものであり、不開示事由の規定自体 を改正すべきである。
また、50年以上前の外交情報など、外交、犯罪捜査等支障のおそれが消滅して いるにもかかわらず、不開示とされている事例が散見される。一定の期間経過後 は、なお特別な支障が存在することを行政機関側が立証しなければならないなど といった、原則開示の趣旨をより強く要請する法改正が必要である。
「特定の個人を識別することができる当該情報のうち、氏名、生年月日その他の 特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより、 公にしても、個人の権利利益が害されるおそれがあると認められないもの」との 規定を設ける。
「前項の部分公開義務の解釈及び運用にあたっては、行政文書の開示を請求する 権利を十分に尊重し、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府 の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにしなければならな い。」
法6条2項は、行政改革委員会(委員長飯田庸太郎三菱重工業株式会社相談役) の「情報公開法制の確立に関する意見」(1996(平成8)年12月16日) においては、個人情報の不開示情報を定めた要綱案第六、(1)、ロ「氏名その他 特定の個人が識別され得る情報の部分を除くことにより、開示しても、本号によ り保護される個人の利益が害されるおそれがないと認められることとなる部分の 情報」として規定されていた。その趣旨は、「個人に関する情報のうち、社会生 活上の情報等にあっては、個人識別性がない状態であれば、これを開示しても、 プライバシーを中心とする個人の正当な権利利益を害するおそれがないと認めら れるものが少なくない」として、個人識別性のある部分を除いた部分の情報を、 例外開示情報としたのである(「III 情報公開法要綱案の考え方」)。そして、 これが、法6条2項として規定された。
他方、法6条1項は、部分開示義務、すなわち「不開示情報が記録された部分を 除いた部分を開示しなければならないこととした」ものである(「情報公開法要 綱案の考え方」)。すなわち、「本要綱案では、行政機関の長は、適法な開示請 求があった場合は、開示請求にかかる行政文書に不開示情報が記録されていると きを除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示する義務を負う(第5第1 項)との原則開示の基本的枠組みを定めることとした」旨が明言された(「考え 方」)。さらに、「開示請求の対象は行政文書であるが、一つの行政文書に様々 な情報が記録されており、開示請求にかかる行政文書に不開示記録が記録されて いるといっても、それが、部分にとどまることがあり得る」と説明されている (「考え方」)。法6条1項は、これらを踏まえて規定されたものである。
ところが、最高裁は、大阪府知事交際費についての差戻審上告審において、部分 公開義務規定である大阪府公文書公開条例12条について、「非公開事由に該当 する独立した一体的な情報をさらに細分化し、その一部を非公開とし、その余の 部分にはもはや非公開事由に該当する情報は記録されていないものとみなして、 これを公開することまでをも実施機関に義務づけているものと解することはでき ない」とする、いわゆる「独立した一体的な情報」説を採用し、知事の交際の相 手方氏名の非公開にとどまらず、交際費の支払年月日、支出項目、支払額の非公 開部分を取り消すことはできないと判示した(最三小判2001年(平成13 年)3月27日民集55巻2号530頁)。この差戻後上告審判決は、法6条1 項は部分公開義務を定めていないという、誤解に基づく解釈を前提とするもので ある。
そこで、上記差戻後上告審判決の誤解を避けるために、法6条2項を法5条1項 ただし書に移べすきである。さらに、新しい2項として部分公開義務規定が積極 的に解釈運用されるための考慮規定を設ける改正を行うべきである。
国民の知る権利の実現とともに、政府の説明責任を果たすための制度としての情 報公開制度については、公開そのものに要する作業については本来税金によって 賄われるべきものであって、手数料は無料とすべきである。
また、写しの交付手数料は、紙による開示の場合は1枚20円とし、電子媒体に よる開示についても、情報によっては紙による開示より高額な請求となりうるた め、真に写し交付等にかかる「実費」となるよう、直ちに改めるべきである。
さらに、情報公開制度の活用により公益を図る機能に着目すれば、公益目的の開 示請求に関しては手数料の減免が図られてしかるべきであり、現在、政令で規定 されている経済的貧困者に関する減免制度についても、恣意的な運用がなされぬ よう法制化すべきである。
法18条に第2項として、次の規定を加えるべきである。
「第2項 行政機関の長は、当該不服申立を当該行政機関において受理した日から、 30日以内に前項に定める諮問をしなければならない。」
現行法においては、不服申立を行ってから、行政機関が諮問を行うまでの期間が 法定されていないため、行政機関が不服申立を事実上放置し、長期間不服申立手 続が進まないといった現状が多数報告されている。したがって、不服申立がなさ れてから、行政機関が当該事案を再考するための期間として「30日」を明記 し、同期間内に諮問を義務付ける規定を新設すべきである。
ヴォーンインデックス手続、インカメラ審査手続きについて、次のような規定を 新設すべきである。
情報公開訴訟では、原告は対象文書の内容を知らないため、的確な主張・立証が 困難であり、裁判所も対象文書を見ないまま判断をしなければならない。情報公 開訴訟の審理を充実させるために、不服申立手続において採用されたヴォーンイ ンデックス手続類似の制度(情報の様式、記載項目、記載内容および非開示の具 体的理由を記載した文書の提出を命じる制度)を情報公開訴訟にも採用すべきで ある。また、ヴォーンインデックスの正確性を担保する手続としてインカメラ審 理をあわせて導入すべきである(このような位置づけとすれば、インカメラ審理 は憲法第82条の裁判の公開の要請にも反しない)。
法21条1項に下線部分を加え、管轄裁判所を広げる改正をすべきである。
「開示決定等の取消しを求める訴訟及び開示決定等に係る不服申立てに対する裁 決又は決定の取消しを求める訴訟(次項及び附則第二項において「情報公開訴 訟」という。)については、行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号) 第12条に定める裁判所のほか、原告の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁 判所にも提起することができる。」
現行法上、情報公開訴訟の裁判管轄は、行政事件訴訟法12条に定める管轄裁判 所のほか、原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地の地方裁判 所に認められているが、情報公開制度は国民が利用しやすい制度であるべきとい う観点から、全ての地方裁判所に裁判管轄が認められるべきである。
国民の知る権利を拡充すべく、司法府(裁判所)および立法府(議院)の情報公 開制度について、別途法律を制定すべきである。
憲法は国家権力を三権に分立させて、相互に抑制と監視の機能を果たさせようと している。国民の知る権利および権力機関の説明責任は、行政部にのみ関わるも のではなく、司法府(裁判所)および立法府(議院)にも同様の制度を設けるべ きである。裁判所は、要綱を制定して制度化を図っているが、最高裁判所の処分 に対して不服申立の手続きがないなど、極めて不十分であり、その運用において も、司法府自身から厳しい判断を下されている(前掲東京地判2004年(平 16)年6月24日)。
当協会は、すでに、2000年6月15日に「裁判所の保有する情報の公開に関 する法律案」を2001年10月1日に「国会の保有する情報の公開に関する法 律案」を作成・公表しており( http://www.jclu.org/katsudou/bills/index.html)、 これらを参照するなどし、早急に立法手続きを行うべきである。
以上
| 行政文書の区分 | 保存期間 | |
| 一 |
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三十年 |
| 二 |
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十年 |
| 三 |
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五年 |
| 四 |
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三年 |
| 五 |
|
一年 |
| 六 | その他の行政文書 | 事務処理上 必要な一年 未満の期間 |
| 備考 | 決裁文書とは、行政機関の意思決定の権限を有する者が押印、署名又はこ れらに類する行為を行うことにより、その内容を行政機関の意思として決 定し、又は確認した行政文書をいう。 |