
2004.8.6
2004年8月6日
議長、発言の機会を与えていただいたことに感謝します。
私は、Japan Civil Liberties Union(JCLU)を代表して発言する東澤靖といいます。私は、昨年の「制度的レイプ、性奴隷、奴隷的慣習」に関する小委員会の決議(2003年26)を引用します。決議は、国家が、武力衝突時の性暴力についての免責を終結するために、効果的な刑事罰のみならず、補償を受けていない暴力に対し補償を行うべきであると繰り返して述べています。
私は、弁護士の立場から、戦時性奴隷被害者への司法的救済の活動に従事してきました。46名のフィリピンのロラたち(フィリピンで老女を敬う呼称)の代理をしています。彼女らは、第二次世界大戦中に日本軍によって性奴隷制の被害を受け、司法的救済と正義を求め、1993年日本で日本政府を相手に訴訟を提起しました。
本日、私は、本小委員会のメンバーの方々に、日本における訴訟の大変残念な結果について報告します。2003年12月25日、ロラたちがクリスマスのミサを行っている間に、日本の最高裁判所は、ロラたちの日本政府に対する訴えを棄却する決定を下しました。決定は、最後には正義が下されると信じていたロラたちにとってひどいクリスマスプレゼントでした。ロラたちの15名はすでに亡くなっています。最高裁判所は、日本軍によって被害を受けた人々を補償しないこととしたのです。その決定の理由は、
民事事件について最高裁判所に上告することが許されるのは、民訴法312条1項又は1項所定の場合に限られるところ、本件上告理由は、違憲及び理由の不備・食違いをいうが、その実質は単なる法令違反をいうもの又はその前提を欠くものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。
という短いものであり、ロラたちの請求に対する実質的な判断は全く加えられませんでした。これが、10年以上に及ぶ訴訟に対する日本の最高裁判所の結論でした。
このような短い理由のみの上告棄却決定は、フィリピンの性奴隷被害者に対するものだけではありません。2003年3月、2件の韓国人性奴隷被害者の訴訟において、最高裁判所は、被害者の上告棄却決定を下しましたが、これらの決定はフィリピンの被害者に対する決定を全く同じ内容でした。日本の国内法及び国際法を理由とする多くの法律的争点があったにもかかわらず、日本の最高裁判所は、一切実質的な判断を加えなかったのです。
争点とされた法律問題について説明しましょう。性奴隷被害者は、日本国による不法行為を理由に謝罪と損害賠償を求めました。しかし、日本の下級裁判所は、(1)日本は第二次世界大戦中、判例法として国家無答責の原則が適用されていた、(2)不法行為の除斥期間は20年であり、その期間はすでに経過している、という理由で、性奴隷被害者の請求を棄却してきました。しかし、これらの技巧的な理由に基づく日本の裁判所の判断は、さらに深刻で実質的な疑問には答えていないのです。国家無答責の原則といった非民主的、反人道的規定が新たに成立した憲法の下で存続しうるのでしょうか。性奴隷という人道に対する罪の被害救済を時効によって妨げることは、国際法の原理、特に重大な人権侵害に対する補償に関する原理と両立するのでしょうか。このような裁判所の対応によって、日本が国際法上負っている義務が解除されるのでしょうか。
それにもかかわらず、日本の最高裁判所は、実質的な理由も述べずに、性奴隷被害者の司法的な救済可能性を消滅させたのです。このような最高裁判所の判断は、日本が国際法上負っている義務に明らかに違反するものです。これらの日本の裁判所の判断は、主に日本政府の主張によってなされたものです。
日本政府は、性奴隷制への過去の関与を歴史的事実として認めています。しかし、同時に、日本政府は、さまざまな法的反論を用いて、性奴隷制に対する法的責任から免れようとしています。国家無答責や時効など性奴隷被害者の請求を棄却するために日本の裁判所が取り上げた法的主張のすべてが、実際は、日本政府が訴訟においてなした主張でした。性暴力被害の国内救済の必要性及び日本の負っている国際上の義務については、本小委員会における特別報告者マクドゥーガル報告及び人権委員会における特別報告者クマラスワミ報告で承認されてきました。しかしながら、日本政府は、それらの国際法上の義務が日本の国内司法手続において実現されることを妨げ続けています。
要するに、日本による性奴隷被害は、日本の国内司法手続において、実質的な審査を受けることなく救済されずにいます。私は、本小委員会のメンバーの方々に、国家は国際法の下で負っている義務の不履行を正当化する根拠として、自国の国内法や技巧的障害を援用することができないという法原則を繰り返して述べていただくようお願いします。
ご清聴に感謝いたします。