2003.5.2
第5次報告書の司法分野関係者に対する研修の項目(p13)には、検察官と裁判官に対しては女性に対する暴力を中心に,矯正職員に対しては憲法と人権にかかわる研修が実施されていることが記載されている。
弁護士会などは、性別分業を前提する「司法におけるジェンダー・バイアス」の存在を報告している。法的救済手段を実現するハズの人々の間における「ジェンダー・バイアス」の存在は条約2条c項が加盟国政府に義務づけている救済の実現に対する深刻な脅威である。
第5回政府報告書は、あたかも法的救済を必要とする差別とは女性に対する暴力だけであるかのように書かれており、不十分である。しかし女性差別はもっと広範な観点から理解されるべきである。CEDAWを始めとする国際規約の国内法に対する効力や国内における差別問題とその社会的な文脈やその他のジェンダーに関わる問題を理解するための総合的な研修に、法律家や調停員・裁判員が参加できるようにすることが必要である。この研修を通じ、社会の期待する女性らしさに適合するよう当事者が行動することを期待することや、当事者の主張に十分に耳を傾けず、その主張の重要性を過小評価し、女性の声を軽視し、あるいは沈黙させることも差別であると、司法運営に携わる者が理解できるようにならなければならない。
日本では全ての弁護士は裁判官と同様、最高裁判所にて研修を受ける。この制度において、裁判官と司法修習生に対する研修は法制度におけるジェンダー・バイアス克服のための国家的施策の重要な部分である。しかし、女性の権利にかかわるものの占める割合、実施時期と頻度、内容とアプローチ、全員に必ず受講が義務づけられているのか、満足できる内容の研修が実施されているのかなど具体的で詳細な情報は公開されていない。適切で具体的な情報がない限り、研修それ自体の有効性を評価することは困難である。
法務省の管轄下にある矯正職員に対する憲法と人権に関する適切な知識はその職務開始時点において必須であるので、実務に従事する前の初期研修においてこうした研修が実施されることはとくに重要であるが、研修の必要性はその時だけに限られない。こうした研修はジェンダーに係わる問題に対する理解を深められるようなものでなければならない。ジェンダーに関する研修の機会がすべての職員に与えられているか、研修の時期と頻度、そして、内容について,研修を担当する法務省による情報の提供が望まれる。このような研修が検察官にもなされていることが望ましい。
政府の報告書は警察を司法分野関係者として取り上げておらず、まるで司法研修とは無関係とでも言うようである。従って研修の実態は定かではない。法の実現においては、警察も、非常に重要な役割を果たす。また、警察官は、女性の権利侵害の場面にもっとも頻繁に遭遇する職業である。以上のことから、ジェンダーに関する研修のあり方について情報公開が必要である。
法律家ではない人々が司法制度に参加する場合には、社会の中にあるさまざまな偏見をその判断に持ち込むことが多い。一般的な社会常識が司法制度に持ち込まれることは歓迎すべきであるが、差別をそれと認識しない「常識」も含まれることには注意したい。ジェンダー・フリーや女性の権利に関する研修がそういった人々に対し行われるべきである。現在調停員は特に離婚調停など家事紛争において不可欠である。こうした調停員のジェンダーバイアスが女性を法から遠ざけてきたことは明らかである。