女性差別撤廃条約日本政府報告書第3回審議:会期前作業部会のための事前質問票案

2003.1.27


第2条(c)(d)[締約国の義務]   【司法におけるジェンダー教育】

  1. 最高裁判所が責任を持つ法律家養成過程において、CEDAWを始めとする国際規約の国内法に対する効力や国内における差別問題とその社会的な文脈について、さらに法律家として遭遇する社会のジェンダー・バイアスを克服するための研修は実施されているか。
  2. 検察官に対する研修のうち、女性の権利、女性に対する直接および間接差別等に関する研修の占める割合はどのくらいか。そのような研修はどのくらいの頻度で提供されているのか(すべての検察官が少なくとも1回、そのような研修を修了するために、どの程度の期間が必要となるのか)。
  3. 裁判官に対して実施されている人権、差別などに関する研修のうち、女性の権利にかかわる研修の占める割合はどのくらいで、どのくらいの頻度で提供されているのか(すべての裁判官が少なくとも1回、そのような研修を修了するために、どの程度の期間が必要となるのか)。
  4. 矯正職員に対する憲法と人権の研修のうち、男女の平等と女性の権利にかかわる研修の占める割合、研修の時期と頻度、受講者の職員全体に対する割合は、どのようなものか。
  5. 司法改革の実現にともない、法的な素養のある法律家ばかりでなく、裁判員など法的な素養のない素人も法的な決定に関与することになる。政府は、法的な素養のない素人が法的決定にかかわる際に、憲法、人権、なかんずくジェンダー・バイアスに関して研修を準備する予定はあるのか。現在、法的な素養を要件とせずに任命される調停員などに対する人権、女性の権利に関する研修はどのように実施されているのか。
  6. 第1線にある警察官に対して、女性差別に対する法的救済を現実化するため、どのような研修が、どのように実施されているのか。

政府報告書の記述

検察官と裁判官に対しては女性に対する暴力を中心に、矯正職員に対しては憲法と 人権にかかわる研修が実施されていることが記載されている。
(第5回報告書 「第2条 3.差別に対する法的救済手段の有無とその効果 (2)人権侵害に対する支援サービス ア) (3)司法分野関係者に対する研修」)

質問の理由

弁護士会などの報告において、性別分業を前提する「司法におけるジェンダー・バイアス」の存在が指摘されている。法的救済手段を実現するハズの制度を運営する人々の間における「ジェンダー・バイアス」の存在は差別をなくそうとする場合、深刻な問題である。しかし、政府報告書は、あたかも法的救済を必要とする差別とは女性に対する暴力だけであるかのように、研修内容を取り上げている。もっと広範な観点から、たとえば社会の期待する女性らしさに適合するよう当事者が行動することを期待することや、当事者の主張に十分に耳を傾けず、その主張の重要性を過小評価し、女性の声を軽視し、あるいは沈黙させることも、差別であると理解できるような差別についての研修を理解することが望ましいと思われる。

  1. 法的制度の担い手を国費で養成していることに鑑み、法制度における「ジェンダー・バイアス」克服のための国家的施策の重要な部分として位置づけることが期待される。司法研修所において実施されている「ジェンダー・バイアス」を克服するための研修の内容について具体的な情報がなければ、たとえ実施されていたという記述があるとしても、研修それ自体を評価することは困難である。
  2. 3. 検察官と裁判官に対しての研修内容とその実施頻度が明らかでないかぎり、研修が検察官、裁判官の一部を対象とするに過ぎないのか、全員が必ず受講するように実施されているのか、そして、多くの女性団体が満足できるような研修が実施されているのか、疑問が残る。裁判所に関しては、交通事故に関する学齢期前の児童の「命の値段」に関する最近の判決は、1986年の雇用機会均等法にもかかわらず、性別役割分担を前提としていた従来の裁判所の姿勢からの転換を示すものとして評価できると考える。
  1. 矯正職員に対する憲法と人権に関する適切な知識はその職務開始時点において必須である。実務に従事する前の初期研修において「ジェンダー・バイアス」を克服する研修が実施されることが重要である。
  2. 法学の素養が「ジェンダー・バイアス」を克服するものではないのはもちろんであるが、少なくとも、憲法や人権、差別問題について、法律家にある程度の知識があることは期待できる。法律家ではない人々が司法制度に参加する場合には、社会の中にあるさまざまな偏見をその判断に持ち込むことが多い。一般的な社会常識が司法制度に持ち込まれることは歓迎すべきであるが、差別をそれと認識しない「常識」をそのまま法的判断としていかすことはCEDAWの趣旨に反する。法律家ではない人々が司法制度に参加する場合には、調停委員の場合も含め、女性の権利や女性に対する差別の問題性についての研修を実施する必要がある。

政府の報告書は警察を司法分野関係者として取り上げず、実施されているという研修の実体は定かではない。法の実現においては、警察も、非常に重要な役割を果たす。また、警察官は、女性の権利侵害の場面にもっとも頻繁に遭遇する職業である。以上のことから、警察における女性の権利、女性差別、そしてジェンダー・フリー研修のあり方について情報公開が必要である。

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