
2002.11.8
| 代表理事 | 更田義彦 |
| 同 | 弘中惇一郎 |
| 同 | 紙谷雅子 |
| 同 | 田中宏 |
自由人権協会は、人権の擁護と促進に資する、真に独立かつ効果的な国内人権機関の設立を求める立場から、これまでにも人権擁護法案に対してたびたび意見を明らかにしてきました(2002年3月25日人権擁護法案に対する意見書など)。
今般、前国会から継続して審議入りとなった人権擁護法案に対しては、残念ながら以下に述べるような数多くの問題が是正されておらず、当協会としては、同法案の廃案と出直しを強く求める次第です。
今回審議入りした人権擁護法案が多くの問題点を抱えることは、当協会も加わる2002年11月6日付「NGO共同声明」で明らかにされているところです。当協会は、とりわけ、以下の2つの問題点は、今回の人権擁護法案にとって致命的なものであると考えております。
今回の人権擁護法案のもとで、人権委員会は、法務大臣の所轄のもとで法務省の外局とされ、独立した予算請求権も人事権も与えられていません。他方で、法務省には、拘置所、刑務所、入国者収容所など、これまで国内及国外から人権侵害の発生がしばしば指摘されてきた施設が存在します。最近の国会審議においても、名古屋刑務所において革手錠のまま保護房に収容された受刑者の複数の死亡事件が明らかにされています。法務省は、人の身柄を強制的に拘束する施設を所轄する点で、人権救済事件の当事者となることが予定されている省庁であります。したがって法務大臣の下に人権委員会を置くことは、人権委員会の独立性に疑念を生じさせることになります。人権委員会は、少なくとも内閣総理大臣の所轄のもと、内閣府の外局とされるべきです。
今回の人権擁護法案のもとでは、報道機関やその業務従事者によるプライバシー侵害や名誉毀損の報道、生活の平穏を害する取材行為が、引き続き、あえて特別の類型として、強制力を伴う特別救済手続の対象とされています。これは、まさしく行政機関によって報道機関の活動や報道内容を直接規制するものに他ならず、表現の自由及び検閲の禁止を定めた憲法21条に抵触するという重大な問題を含むことは、前国会で明らかにされたとおりです。表現の自由が民主主義社会の根幹をなし、報道機関の活動が国民の知る権利に応えることによって、民主主義社会の根幹を担っていることを考えれば、このような強制力を伴う措置が、司法手続によることなく行政機関によって発動されることは、表現の自由を萎縮させるだけでしかなく、認められるべきものではありません。
この問題は、表現の自由の確保にとって致命的な問題であり、取材・報道に対する条項を一時的に停止するといった小手先の修正で是正できるものではありません。取材・報道をめぐる問題は、強制力を伴う特別救済手続の対象から、外すしかないものです。
アジア地域においても、隣国の韓国に国内人権機関が独立性を与えられて設立されたのをはじめ、国内人権機関の人権救済に果たす役割と期待はますます増大しています。当協会は、その中で、日本が、独立性に疑いを差し挟む余地を残し、かつ報道の自由を脅かすなど問題を抱える人権委員会の設立を強行することは、国内のみならず国際的な批判の対象となり、かつ悪しき先例となるであろうことを憂慮します。
以上の次第で当協会は、人権擁護法案の廃案と出直しを強く求めます。
以 上
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国内人権委員会に関するこれまでのJCLU意見書・共同声明
2002/11/ 6 NGO共同声明:人権擁護法案に懸念を表明します。
2002/ 3/25 人権擁護法案に対する意見書 2001/ 7/18「人権救済制度の在り方について」に対する意見書 2001/ 1/29「人権救済制度の在り方に関する中間取りまとめ」に対する要望書 1999/11/18報道被害者救済のための行政命令による記事差し止めについて意見 |