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司法制度改革審議会
中間報告への意見書

2001.1.24


司法制度改革審議会
会長 佐藤幸治様

2001 年 1 月 24 日

東京都港区愛宕 1-6-7
愛宕山弁護士ビル 306号
社団法人 自由人権協会
代表理事 内田剛弘
同   金城清子
同   江橋崇 
同   更田義彦
同   秋山幹男

意見書(パブリックコメント)

 貴審議会の中間報告について、以下のとおり意見を述べます。

意見の骨子

第1 司法に関する情報公開の推進について

  1. 裁判所情報公開法の制定を

     司法行政に関する情報について、市民の知る権利を保障し、裁判所の市民に対する 説明責任を果たすため、行政機関情報公開法に準じ裁判所情報公開法を早期に制定することを提案します。

  2. 判決等の公表を

     判決内容に関する情報について、市民の知る権利を保障し、裁判所の市民に対する説明責任を果たすため、判決及び理由を付すべき決定は原則としてすべてインターネット等により公表することを提案いたします。

     公表する判決等を選択する場合は、弁護士や研究者を含めた機関において、透明性が確保された公正な手続きによりなされるべきものと考えます。

第2 国民の司法参加について

  1. アミカス・キュリヱ(裁判所の友)制度の導入を

     市民に司法参加の機会を保障し、市民に有益な意見を述べる機会を与えることにより、より公正な裁判を行うことができるよう、訴訟の当事者以外の者が誰でも当該訴訟について裁判所に意見書を提出できるアミカス・キュリヱ(裁判所の友)制度の導入を提案します。

  2. 陪審制度の導入を

     市民に司法参加の機会を保障し、刑事被告人に市民による陪審裁判を受ける機会を保障するため、刑事訴訟手続に陪審制度を導入するべきであると考えます。陪審は被告人の権利とし、辞退できるものとし、有罪判決に対しては控訴できるものとすることを提案します。また、民事訴訟についても一定の範囲で陪審制度の導入を検討すべきであると考えます。

  3. 参審制の導入を

     市民に司法参加の機会を保障し、市民の感覚が反映した裁判がなされるようにするため、陪審制度のほかに、民事訴訟手続(行政訴訟手続を含む)及び刑事訴訟手続に一般市民が参審員として参加し、職業裁判官とともに審理及び評決に関与する参審制度を導入することを提案します。


意見の内容

第1 司法に関する情報公開の推進について

  1. 裁判所情報公開法の早期制定を

     司法行政に関する情報について、行政機関情報公開法に準じて裁判所情報公開法を早期に制定することを提案します。具体的には先に当協会が公表した「裁判所の保有する情報公開に関する法律案」を参考にしていただきたいと存じます。

  2. 判決等の公表を

    1. 問題の所在

       従来、裁判所は、先例的価値のある判例情報について、裁判所が編纂した判例集及び裁判所時報等に登載しています。

       しかし判決の先例的価値の評価については、裁判所のみによって判断されるべきものでないことは言うまでもありません。すべての裁判、とりわけ公開の法廷で言い渡された判決及び理由の付された決定については、学者研究者の批判的検討はもとより、広く国民の批判を受けるべきです。とくに裁判所の先例尊重主義的な傾向が強いことを考慮すると、判例集に登載する選択の持つ意義は、極めて重大です。

       ところが現状は、いわば知的な公共財と言われる判決や決定が正当に取り扱われていない実情にあります。一例を挙げれば、警察官の行為が人を犯罪に誘い込んだおとり捜査にあたるか否かが争われた事案に関し最高裁判所第3小法廷の5人の裁判官の意見が3対2に分かれた裁判さえ登載資料なし、とされています(最高裁3小平成8年10月18日決定、指宿信「法情報公開システムの構築を」朝日新聞2000年11月11日号『論壇』参照)。

       司法改革審議会の中間報告も、判例情報を積極的に公開していくことは紛争防止や解決にとって重要であると指摘し、国民がより利用しやすい司法を実現する見地から重要であると述べていますが、裁判所の判決は判決の名宛人である当事者のみに向けられるものではなく、裁判所の示した判断は、まさに公共的関心事です。

       ところが、裁判所で編纂される判例集に登載される裁判は極めて限られており、判例時報、判例タイムズ、金融法務事情、金融財政、労働判例等々の判例掲載誌に収録される判決、決定は、その収録の基準、手続きも公表されてさえいません。これら民間の法律雑誌に対する裁判例の提供と選択についても、裁判官がいわば私的立場で関与しているのが実情であると言われている反面、裁判を担当した裁判官自身もその判決が判例集に登載されるか知らされていないとも言われています。

       そこでこの際、裁判の公表及び公表の手続について、その飛躍的改善を図る必要があると思われます。

    2. 具体的な提案

       司法に関する情報、とりわけ理由の付される裁判については、格別の事情のない限り、第一次情報としては、すべて公表することを提案します。

       判決や決定等の公表に際しては、個人情報を保護する観点から一定の場合に匿名とするなど、必要最小限度の手を加える必要はありますが、基本的には国民の検討の対象として提供されるべきです。

       さらに公表の基準等の手続きは透明度を高め、裁判所、法務省の関係者だけではなく、弁護士等の在野法律家、並びに学者研究者によって運営する体制を整備することを提案します。

      アメリカでは90年代初頭から連邦最高裁判所判決の全部公開のためのプロジェクトが始められ、フランスでも国立法情報科学センタ−(C.N.I.J)に法令及び判例に関する情報が統合され、網羅的なネット公開が組織的に整備されていると言われています。このような欧米の体制に比べて、日本の法情報科学の発展と体制の整備には遅れがありますが、日本でも最高裁判所が知的財産権に関する判決等のインタ−ネット上の提供等を進めています。

       私たちは、原文の改ざんを防止し、同一性を保持する必要に応えるため、技術上、制度上の課題を克服して、インタ−ネットによる法情報の提供を飛躍的に推進する体制を整備することを提案します。 【参考文献:指宿信・町村泰貴「インタ−ネットにおける法律情報利用の現状と課題:わが国と諸外国との比較から」 全国文献・情報センタ−人文社会科学学術情報セミナ−シリ−ズ10 アジア情報学のフロンティア(予稿集)『2000』所収】

第2 国民の司法参加について

 貴審議会が、中間報告において、「司法の国民的基盤を強化する見地から、司法制度全体の中で、国民の司法参加(関与)を拡充していくことが必要である」としたうえで、裁判手続への新たな参加制度を検討するとしている点は、司法過程に対する国民参加を可能にさせるものであり、当協会は高く評価するとともに、以下のとおり提案します。その実現に向けて貴審議会が努力されるようお願い致します。

  1. アミカス・キュリヱ(裁判所の友)制度の導入を

    1.  提案

       日本の裁判手続にアミカス・キュリヱ(Amicus Curiae)を導入するため、民事訴訟法、行政事件訴訟法、刑事訴訟法等に所要の改正を加えて、次の趣旨の規定を設けることを提案します。

      1. 何人も(国の機関を除く)、「裁判所の友」として、係属中の事件に関する法律上及び事実上の問題点について、裁判所の許可を得て、裁判所に意見書を提出することができる。
      2. 「裁判所の友」の意見書提出許可の申立ては、当該事件が係属している裁判所に対し、以下の事項を簡潔に記載した申立書に、提出を予定する意見書を添付して行なわなければならない。

          イ 事件の表示(事件番号・当事者の氏名)

          ロ 裁判所の友として意見書を提出する者の住所、氏名

          ハ 求める判断の趣旨(認容・棄却・却下)

          ニ 意見書の要旨

      3. 「裁判所の友」の意見書提出許可の申立てをする者は、申立書及び意見書の副本を、当該事件の全当事者に直送しなければならない。
      4. 意見書提出の許可の申立ては、事実審においては口頭弁論終結時までに、上告審においては上告理由書又は上告受理申立理由書もしくは答弁書の提出期限までに、行わなければならない。
      5. 「裁判所の友」の意見書提出許可の申立てがなされた場合、裁判所は意見書の内容が訴訟の内容又は争点と全く無関係であるか又は意見書提出の許可によって著しく訴訟の遅延を生ずるおそれがある場合を除き、当該申立てを許可するものとする。
      6. 申立人は、裁判所が申立てを許可しない場合でも異議を述べることはできない。
      7. 裁判所は、「裁判所の友」の意見書を判断に利用することができる。
    2.  提案の理由
      1. アミカス・キュリヱ( Amicus Curiae)とは

         Amicus Curiae(裁判所の友)とは、当事者(参加人を含む)以外の第三者が事件の処理に有用な意見や資料を提出し裁判所を補助する制度です。

      2. Amicus Curiaeの必要性・有用性

         Amicus Curiaeが我が国の裁判制度に必要・有用とされる理由の第一は、Amicus Curiaeにより、現在よりもさらに広く市民に支持されるような正しい裁判を確保し、これによる市民の司法への信頼を醸成することができることです。

         まず、判決の結果に事実上の利害・関心を有する者の意見を広く参考にすることは正しい裁判の確保につながります。とりわけ民事訴訟は伝統的に私人間の具体的権利義務の紛争解決を目的としており、民事訴訟の手続構造は当事者主義的構造を前提としてきたことから、判決は裁判の当事者のみを拘束する相対的なものであると考えられてきました。しかしながら、判例法主義または制定法主義のいずれをとわず、裁判の判決が先例となり、将来の判断に影響を及ぼす以上、当事者のみならず判決の結果に対し事実上の利害又は関心を有する者が存在することは否定できません。事件の種類によっては裁判所は背後に社会問題が控えた重大な法律問題を解決し、立法に代わって政策形成について積極的役割を担わなければならない場合があります。たとえば、差別、表現の自由、宗教の自由、環境をめぐる問題などの憲法訴訟や行政訴訟は、その判断の結果が裁判の当事者個人のみならず特定のグループまたは市民全体に影響を与えます。

         次に、裁判所の友が裁判の当事者の一方を支援することにより、個人の当事者の訴訟遂行能力を補充し、公平で正しい裁判を確保します。たとえば、訴訟当事者間で著しく訴訟遂行能力が不均衡な場合、個人が会社や国などを相手に訴訟を行う場合、Amicus Curiaeの関与によって訴訟遂行能力の不均衡を是正することができます。このことは刑事訴訟においても全く同様です。

        さらに、Amicus Curiaeは裁判所の調査活動の補充機能を果たし、正しい裁判を確保することができます。たとえば、死刑制度の是非、わいせつ概念などは市民の意識が判断に反映せざるを得ないはずですが、とくに弁護側にとってこの資料の収集は容易ではありません。Amicus Curiaeとして市民が提出する政治的、経済的、社会的データは裁判所の判断のための重要な資料と考えられます。

         また、近年の訴訟の専門化・高度化に伴い、専門知識を有する個人や団体がAmicus Curiaeとして訴訟に関与するならば、裁判所にとって新しく難解な法の分野の形成を正しく行うために有益でありましょう。

         国内的な視点からだけではなくAmicus Curiaeは国際化の観点からも正しい裁判に役立ちます。国際化の進展によって訴訟も国際化が進んでおり、外国法の解釈や外国の文化、習慣、制度を前提に裁判を進める必要のある場合に、外国の個人、団体等がAmicus Curiaeとして意見書を提出できるならば、裁判所はこれによって正しい判断を行うことができます。そして、外国における日本の裁判制度への信頼も増すことは疑いありません。

         Amicus Curiaeが我が国の裁判制度に必要・有用とされる第二の理由は、市民に司法参加の機会と意欲を与えることができることです。市民にとって、裁判の内容や結果は、公開裁判の傍聴や新聞等のマスメディアの報道によって知るところがほとんどであり、市民の権利義務に関連するところが大きいにもかかわらず、裁判は市民にとって遠い存在となっています。市民が裁判手続に直接関与しうるAmicus Curiaeは、市民の裁判に対する関心を引き寄せる原動力になると考えられます。これからの社会の公益的活動は、NPO法人などの団体などによって担われることが多くなると考えられますが、様々な分野で専門的知識や経験を蓄積した市民団体が、Amicus Curiaeの制度によって司法に参加し貢献することが大いに期待されます。

         Amicus Curiaeの制度を導入するについては、訴訟資料が膨大になり裁判所の負担が増大する、裁判官に対する圧力となる、裁判官が法と論理を軽視し具体的解決を誤る危険がある、ロビイングの一部であり感情の表明にすぎず有用でない場合が多いなどの指摘も予想されます。しかしながら、ここに述べたとおりAmicus Curiaeにはこれらの指摘をはるかに上回る有用性が存在すると考えられています。

         なお、米国では連邦司法省公民権部など政府機関のAmicus Curiaeの意見書の有用性が指摘されていますが、我が国では政府の意見に裁判所が左右されることに対する懸念があること及び市民の司法参加として制度を位置づけることから、国の機関は「裁判所の友」から除外しました。

  2. 刑事訴訟に陪審制度の導入を

    1. 刑事訴訟に陪審制度を

       当協会は、1989年9月に「新陪審法案(第1次案)」を公表し、市民の検討に付してきたところであり、貴審議会が「新たな参加制度」を検討するにあたって、是非、この「新陪審法案(第1次案)」(以下「本法案」という)を参照されるよう要望いたします。

       どのような陪審制度が望ましいかについては、それぞれの司法制度はもとより、市民社会の成熟度や当該社会の文化のあり方によっても大きく影響されると思われるのであり、中間報告が「欧米諸国の陪審・参審制度をも参考としながら、特定の国の制度にとらわれることなく・・・我が国にふさわしいあるべき参加形態」を検討するとしているのも、この点を念頭に置いているものと考えられます。

       当協会の本法案は、現在停止中の陪審法(大正12年法律第50号)から出発しつつ、国民主権・基本的人権の尊重を基調とする憲法秩序に違反する箇所は改廃し、併せて新しい刑事訴訟法に合致するよう内容及び文言を修正したものであり、具体的作業は当協会に所属する学者及び弁護士が行いました。このため、本法案は、日本において適用可能であるとともに、現在の実務的諸問題にも対応しうるものとなっています。

       本法案の具体的内容は添付のとおりですが、その特色は以下のとおりです。

       第1に、陪審制は被告人の権利とし、被告人による陪審の辞退を認めました。これにより、被告人は希望する場合には職業裁判官による審理を受けることができることになります。

       第2に、陪審員による直接審理を実効あるものとするため、伝聞証拠禁止の範囲を、現行の刑事訴訟法より拡大しました。これは、職業裁判官の場合には、伝聞法則の意義を理解し、それぞれの証拠価値を適切に評価しうると考えられるため、現行の刑事訴訟法はいくつかの例外を許容していると考えられるところ、法律的に素人の市民についてこのような例外を認めることは相当ではありません。これによって、陪審審理では、刑事訴訟の原則に従いつつ、しかも簡明な証拠法則が適用されることになるのであり、陪審による適切な判断が期待できます。

       第3に、陪審の答申に拘束力を認めました。これにより、戦前のように無罪答申に対して別の陪審が再審理するという非効率を防止するとともに、陪審制の権威を高め、陪審員に自負心を与えることができます。

       第4に、無罪判決に対する検察官控訴を禁止する一方、有罪判決に対してはこれまでどおり、刑事訴訟法に従った控訴を認めました。無罪判決に対する控訴を禁止したのは、無罪の心証を抱く複数の陪審員が存在する場合には、それだけで、有罪を認定するに必要な「合理的疑いを超える証明」は不可能と考えられるからです。他方、有罪判決に対する控訴を認めることによって、陪審審理を選択することによる不利益を排除できることとなり、制度の活用が期待できることとなります。

    2. 民事訴訟における陪審制度について

       民事訴訟(行政訴訟を含む)についても一定の範囲で陪審制度導入を検討すべきものと考えます。

  3. 参審制度の導入を

     市民に司法参加の機会を保障し、市民の感覚が反映した裁判がなされるようにするため、民事訴訟手続(行政訴訟手続を含む)及び刑事訴訟手続に一般市民が参審員として参加し、職業裁判官とともに審理及び評決に関与する参審制度を導入するべきであると考えます。

     陪審制度が導入されても、一定の場合に限られることが予想されますが、それ以外に場合にも、できる限り広く国民の参加による裁判を実現するため、参審制度の導入は欠かせないものと考えられます。

    【添付資料】
    1. 裁判所の保有する情報の公開に関する法律案
    2. アメリカ連邦最高裁判所におけるAmicus Curiae
    3. 新陪審法案

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