
2000.12.27
2000 年 12 月 27 日
東京都港区愛宕 1-6-7
愛宕山弁護士ビル 306号
社団法人 自由人権協会
代表理事 内田剛弘
同 金城清子
同 江橋崇
同 更田義彦
同 秋山幹男
日本が1979年に国際人権条約である市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)を批准してからすでに20年余を経過した。自由権規約には、付属文書としての選択議定書が存在し、この選択議定書を批准した国の市民は、国内で救済を受けられない権利侵害について、条約機関である規約人権委員会に通報して、救済を受けることができる。しかし、この選択議定書は、現在に至るまで日本政府によって批准されていない。
選択議定書は、自由権規約の批准国150カ国の中で、その約3分の2にあたる98カ国によって批准されており、日本も最近においては第3回および第4回の定期報告書審査の際に、規約人権委員会から再三にわたって批准の勧告を受けている。また、選択議定書が批准されていないもとで、規約人権委員会が明確に規約違反を指摘する人権侵害に対し、裁判所を含む日本政府が判決や立法など何らの救済措置をとらずに、放置するという事態が発生している。婚外子の相続分差別、定住外国人に対する年金や恩給の差別、代用監獄の存続、あるいは死刑対象犯罪や死刑囚の処遇などがその端的な例である。
日本政府は、選択議定書の批准を求める声に対して、司法権の独立などを理由に、自由権規約批准の直後から検討中であるとの立場をとり続けている。しかし、国内裁判所の判決を法的に覆す権能を持たない通報制度が、司法権の独立を侵害することはありえない。また何よりも、具体的な問題の所在を明らかにすることも、その問題の解決可能性を広く議論することもせず、「検討中」という理由をもって批准を長年にわたって先送りにし続けることは、実質的には条約を誠実に遵守しておらず、もはや効果的な救済措置を与える義務など自由権規約のもとでの義務を履行していないといわざるを得ない状況にある。
日本は、自由権規約の批准後にも、女性差別撤廃条約、人種差別撤廃条約、拷問等禁止条約などを批准して、これらの人権諸条約においても条約機関への通報制度が存在するが、日本政府は、それらの通報制度を利用可能なものとするための批准や宣言を行っていない。そのような中にあっても、2000年10月に男女共同参画審議会が発表した「男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的考え方−21世紀の最重要課題−(答申)」においては、通報制度を保障する女性差別撤廃条約の選択議定書について、「女性にかかわりの深い国際約束のうち女子差別撤廃条約の選択議定書やILO条約等の未締結なものについて、世界の動向や国内諸制度との関係にも留意しつつ、男女共同参画の視点から積極的な対応を図っていく必要がある」としていることは、変化へのきざしとして積極的に評価できるものである。
自由人権協会は、これら国際人権諸条約に保障された通報制度を実現するために、日本政府が、必要な選択議定書の批准や宣言を直ちに行うことを求める。また、日本が批准する国際人権諸条約のもとで市民が本来保障されるべき権利を実現させるために、日本政府による必要な選択議定書の批准や宣言にかかわらず、通報を含むあらゆる手段により条約機関に権利の救済を求めていくことを宣言するとともに、国内で救済できない個々の権利侵害について日本政府が、条約機関での審査手続を異議なく受け入れるべきことを求める。