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Amicus Curiae(裁判所の友)制度導入の提言

2000.9.20


司法制度改革審議会 会長 佐藤幸治様

2000 年 9 月 20 日
社団法人 自由人権協会

意見書

社団法人自由人権協会は、当協会の「市民と司法改革プロジェクト」における検討結果に基づき、司法制度改革の論点項目である「国民の司法参加」を実現するための一方策として、以下のとおり、Amicus Curiae(裁判所の友)の制度の導入を提言します。

第1 提言

日本の裁判手続にAmicus Curiaeを導入するため、民事訴訟法、行政事件訴訟法、刑事訴訟法等に所要の改正を加えてつぎの趣旨の規定を設けることを提言します。

  1. 何人も(国の機関を除く)、「裁判所の友」として、係属中の事件に関する法律上及び事実上の問題点について、裁判所の許可を得て、裁判所に意見書を提出することができる。
  2. 「裁判所の友」の意見書提出許可の申立ては、当該事件が係属している裁判所に対し、以下の事項を簡潔に記載した申立書に、提出を予定する意見書を添付して行なわなければならない。 一 事件の表示(事件番号・当事者の氏名)
    二 裁判所の友として意見書を提出する者の住所、氏名
    三 求める判断の趣旨(認容・棄却・却下)
    四 意見書の要旨
  3. 「裁判所の友」の意見書提出許可の申立てをする者は、申立書及び意見書の副本を、当該事件の全当事者に直送しなければならない。
  4. 意見書提出の許可の申立ては、事実審においては口頭弁論終結時までに、上告審においては上告理由書又は上告受理申立理由書もしくは答弁書の提出期限までに、行わなければならない。
  5. 「裁判所の友」の意見書提出許可の申立てがなされた場合、裁判所は、意見書の内容が訴訟の内容又は争点と全く無関係であるか、又は意見書提出の許可によって著しく訴訟の遅延を生ずるおそれがある場合を除き、当該申立てを許可するものとする。
  6. 申立人は、裁判所が申立てを許可しない場合でも異議を述べることはできない。
  7. 裁判所は、「裁判所の友」の意見書を判断に利用することができる。

第2 提言の理由

1. Amicus Curiaeとは

Amicus Curiae(裁判所の友)とは、当事者(参加人を含む)以外の第三者が事件の処理に有用な意見や資料を提出し裁判所を補助する制度です 1

2.Amicus Curiaeの必要性・有用性

Amicus Curiaeが我が国の裁判制度に必要・有用とされる理由の第一は、Amicus Curiaeにより、現在よりもさらに広く市民に支持されるような正しい裁判を確保し、これによる市民の司法への信頼を醸成することができることです。

まず、判決の結果に事実上の利害・関心を有する者の意見を広く参考にすることは正しい裁判の確保につながります。とりわけ民事訴訟は伝統的に私人間の具体的権利義務の紛争解決を目的としており、民事訴訟の手続構造は当事者主義的構造を前提としてきたことから、判決は裁判の当事者のみを拘束する相対的なものであると考えられてきました。しかしながら、判例法主義または制定法主義のいずれをとわず、裁判の判決が先例となり、将来の判断に影響を及ぼす以上、当事者のみならず判決の結果に対し事実上の利害又は関心を有する者が存在することは否定できません。事件の種類によっては裁判所は背後に社会問題が控えた重大な法律問題を解決し、立法に代わって政策形成について積極的役割を担わなければならない場合があります。たとえば、差別、表現の自由、宗教の自由、環境をめぐる問題2などの憲法訴訟や行政訴訟は、その判断の結果が裁判の当事者個人のみならず特定のグループまたは市民全体に影響を与えます。

次に、裁判所の友が裁判の当事者の一方を支援することにより、個人の当事者の訴訟遂行能力を補充し、公平で正しい裁判を確保します。たとえば、訴訟当事者間で著しく訴訟遂行能力が不均衡な場合、個人が会社や国などを相手に訴訟を行う場合、Amicus Curiaeの関与によって訴訟遂行能力の不均衡を是正することができます。このことは刑事訴訟においても全く同様です。

さらに、Amicus Curiaeは裁判所の調査活動の補充機能を果たし、正しい裁判を確保することができます。たとえば、死刑制度の是非3 、わいせつ概念4などは市民の意識が判断に反映せざるを得ないはずですが、とくに弁護側にとってこの資料の収集は容易ではありません5 。Amicus Curiaeとして市民が提出する政治的、経済的、社会的データは裁判所の判断のための重要な資料と考えられます。 また、近年の訴訟の専門化・高度化に伴い、専門知識を有する個人や団体がAmicus Curiaeとして訴訟に関与するならば、裁判所にとって新しく難解な法の分野の形成を正しく行うために有益でありましょう。 国内的な視点からだけではなくAmicus Curiaeは国際化の観点からも正しい裁判に役立ちます。国際化の進展によって訴訟も国際化が進んでおり、外国法の解釈や外国の文化、習慣、制度を前提に裁判を進める必要のある場合に、外国の個人、団体等がAmicus Curiaeとして意見書を提出できるならば6、裁判所はこれによって正しい判断を行うことができます。そして、外国における日本の裁判制度への信頼も増すことは疑いありません。 Amicus Curiaeが我が国の裁判制度に必要・有用とされる第二の理由は、市民に司法参加の機会と意欲を与えることができることです。市民にとって、裁判の内容や結果は、公開裁判の傍聴や新聞等のマスメディアの報道によって知るところがほとんどであり、市民の権利義務に関連するところが大きいにもかかわらず、裁判は市民にとって遠い存在となっています。市民が裁判手続に直接関与しうるAmicus Curiaeは、市民の裁判に対する関心を引き寄せる原動力になると考えられます。これからの社会の公益的活動は、NPO法人などの団体などによって担われることが多くなると考えられますが、様々な分野で専門的知識や経験を蓄積した市民団体が、Amicus Curiaeの制度によって司法に参加し貢献することが多いに期待されます。

Amicus Curiaeの制度を導入するについては、訴訟資料が膨大になり裁判所の負担が増大する、裁判官に対する圧力となる、裁判官が法と論理を軽視し具体的解決を誤る危険がある、ロビイングの一部であり感情の表明にすぎず有用でない場合が多いなどの指摘7も予想されます。しかしながら、ここに述べたとおりAmicus Curiaeにはこれらの指摘をはるかに上回る有用性が存在すると考えられています8

なお、米国では連邦司法省公民権部など政府機関のAmicus Curiaeの意見書の有用性が指摘されていますが9、我が国では政府の意見に裁判所が左右されることに対する懸念があること及び市民の司法参加として制度を位置づけることから、国の機関は「裁判所の友」から除外しました。

以上のとおり提言いたしますので、ご検討のうえ、貴審議会の報告書において取り上げていただきたく、お願い致します。

添付資料 「アメリカ連邦最高裁判所におけるAmicus Curiae」
千葉大学法経学部助教授     金 原 恭 子
早稲田大学政治経済学部助教授  川 岸 令 和
社団法人自由人権協会会員弁護士 小町谷 育 子


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