
2000.8.25
個人情報保護法制化専門委員会 御中
2000 年 8 月 25 日
東京都港区愛宕 1-6-7
愛宕山弁護士ビル 306号
社団法人 自由人権協会
代表理事 内田剛弘
同 金城清子
同 江橋崇
同 更田義彦
同 秋山幹男
個人情報保護法制に熱心に取り組んでおられる貴委員会に対し、心から敬意を表します。このたびの貴委員会の個人情報保護基本法制に対する大綱案(中間整理)について、以下の通り当協会の意見を述べさせていただきますので、ご参考にしていただければ幸いです。
個人情報に関する利用、入手、取扱い等、五つの基本原則を定めたことに関しては評価できます。しかしながら、行政機関におけるこれらの原則に関する取扱い基準と民間等におけるそれが全く同じということでは疑問が残ります。公的部門についてはより厳しく、保護義務を課すべきであると考えます。
むしろ検討手順としては、民間部門の基本法制と同時もしくは先行させて、国の行政機関の個人情報保護法の改定を含む、公的機関の保有する個人情報保護のための法的拘束力をもった法制度作りがなされるべきであると考えます。この点について当協会では本年6月に、「行政機関の保有の個人情報保護に関する法律(自由人権協会案)」を別紙のとおり発表したところであり、是非ともご参考にしていただきたいと存じます。
実態に即して考えても、現在、いわゆる個人情報保護条例を持つ多くの地方自治体では、収集制限の原則を定め、これらの原則に関しては、義務規定としてその取り扱い等を厳しく規定しており、その水準より緩やかな意味合いしか持たない基準が「基本原則」として定められたのであれば、行政機関の個人情報の取扱いに関する国民の危惧は拭いきれないどころか、不信感が増幅しかねず公的機関の業務にも影響を与えかねません。
実際、貴委員会がその審議の過程においても、官民の間と民民の間では、前者が人格権を保護し、後者が財産権を保護する側面が強いというように、その保護法益が異なるとの意見が紹介されているところであり、両部門で異なった規定の仕方をとることこそが、むしろ自然な流れではないでしょうか。
周知のとおり、情報公開法の立法過程では、本人情報の開示をどう扱うかが問題となりましたが、行政機関等が保有する個人情報の本人開示は、情報公開法で開示するのではなく、国の個人情報保護法を改正し、個人情報保護法で情報公開法と同等の開示がなされるようにすることになっています。その場合、対象となる個人情報は、行政機関等が保有するすべての情報となり、マニュアル情報も含まれ、検索可能な情報に限定されないことになります。
この点からも、公的部門の個人情報保護法制は民間部門の保護法制とは切り離して定めるべきです。
中間報告では、民間部門保有の個人情報に関して侵害があった場合の救済方法として、苦情の申し立てによる救済機関による解決が提案されています。いわゆる司法外救済制度としてオールタナティブな救済の道が開かれることについては賛成いたしますが、その機関が公的なものであること、あるいは行政機関の意思が反映されるものとして機能することについては、強い危惧の念を表明せざるを得ません。
法規定に厳格性を求めると民間機関の日常業務に支障がでるため、基本原則についてはどうしても緩やかな規定ぶりにならざるを得ないことが想定されます。そのような緩やかな原則を、公的な機関が自由裁量によって運用することは、保護の名の下での行政裁量権の拡大につながり、場合によっては新たな人権侵害につながりかねません。したがって、民間機関保有の個人情報の取り扱いに問題が生じた場合の救済は、あくまで民間機関による自律的な第三者機関によって行われるべきであると考えます。
表現の自由との関係について、「十分留意する」とされているだけで、明確な方向性が示されていないことに当協会は強い危惧の念を表明します。報道機関が扱う個人情報であっても、NHKの受信料関連の情報や新聞社の購読者に関する情報など、営業関連情報などの報道目的以外の情報については、他の民間機関同様、基本法の枠組みで考えることが可能であることはいうまでもありません。しかしながら、取材過程で得られた個人情報について保護法制の網をかけることは、取材源の秘匿を脅かしたり、公表前に報道対象から事前圧力を受けやすくなるなど、表現の自由を直接侵害する危険性を孕んでおり、制限規定は憲法違反の疑いが生じると考えます。
したがって、報道・出版・学術・研究など、表現の自由の行使を目的とする領域の個人情報は、包括的に当該個人情報保護法制から適用除外することを求めます。これは、規律ごとに情報の性格によって適用するか否かを定めるとの考え方をとらないことを意味します。
最後に、今後、最終報告書が出される場合におきましても、中間整理同様、意見聴取手続きを時間的余裕をもって採用されることをお願いいたします。