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いわゆる電力会社社員殺害事件の無罪判決後における
外国人被告人の勾留について (声明)

2000.05.27


無罪判決を受けたネパール人被告人に対し、東京高等裁判所は、2000 年 5 月 8 日、勾留を命ずる決定をしたが、この決定は、外国人に対する不合理な差別に該当し、憲法第 14 条第 1 項 (法の下の平等)、国際人権規約 (自由権規約) 第 26 条 (法の下の平等) に違反するので、見直されるべきである。

いわゆる電力会社社員殺害事件について、東京地方裁判所は、約 2 年半にわたり、34 回の公判手続を重ね、慎重な審理を遂げた上、去る 4 月 7 日、ネパール人被告人に対し、無罪の判決を言い渡した。この無罪判決によって、当然に、勾留は失効したが、その身柄は退去強制手続の審理のため、法務省入国管理局に移された。

ところが、東京高等裁判所は、検察官が控訴し、控訴記録が到達すると、わずか数日後に、被告人を勾留する決定を行った。

一般に、無罪判決を受けた被告人は、判決の確定を待つまでもなく、その告知と同時に釈放され、被告人が日本人の場合には、無罪判決後に、同じ公訴事実について再度勾留される場合は、極めて稀有である。本件でも、無罪判決を言い渡した原審裁判所は、ネパール人被告人の勾留を求める検察官の職権発動の申し出に対して、勾留をしないという判断を行った。

しかるに、東京高等裁判所は、無罪判決を受けた被告人を再度勾留するについて、新たに勾留の事由が発生したわけでもないのに、第一審の膨大な記録の検討にわずかな時間しか充てず、被告人には罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり、罪証隠滅のおそれないしは逃亡のおそれがあるとして、あたかも起訴前の勾留裁判官が勾留状を発付するかのごとく迅速に勾留の決定を行った。

今回の東京高等裁判所の決定は、国際化時代における人々の国境を越えた往来の実状と、人権の具体的保障の必要性について、基本的な認識に欠けるものであり、被告人が外国人であることを不当に重視し、無罪判決が取り消されて有罪判決を受ける場合に備えた刑の執行の確保について、外国人被告人を差別的に取り扱ったものと言わざるを得ない。

当協会は、この機会に、無罪判決を受けた被告人が国籍のいかんを問わず平等に人身の自由を保障された状態において、「公正な裁判」を受けることができることを強く念願し、弁護団が東京高等裁判所の勾留決定の取り消しを求めて「特別抗告」をしたことに関して、最高裁判所が「公正な判断」を行うよう、強く期待する。

2000 年 5 月 27 日

社団法人 自由人権協会
代表理事 内田剛弘
同   金城清子
同   江橋崇 
同   更田義彦
同   秋山幹男


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