情報公開法の早期制定と政府提出法案についての意見書

1998 年 11 月 20 日


内閣総理大臣 小渕恵三殿
総務庁長官  太田誠一殿
自由民主党  御 中
民主党    御 中
公明党    御 中
自由党    御 中
日本共産党  御 中
社会民主党  御 中
さきがけ   御 中

社団法人 自由人権協会
代表理事 山田卓生
代表理事 内田剛弘
代表理事 金城清子

情報公開法の早期制定と政府提出法案についての意見書

  1. 当協会は、あらゆる人々の自由と人権を擁護するという立場から情報公開制度の研究を行い、既に 1979 年 9 月には日本で初めて「情報公開法要綱」を発表し、以来、情報公開制度の確立を提唱してきました。1995 年 12 月には、行政改革委員会の行政情報公開部会 (以下、部会といいます) における要綱案がよりよいものとなるよう「JCLU 行政情報公開法モデル大綱」(以下、モデル大綱といいます) を立案し、同部会に対し意見書として提出しました。さらに、1996 年 7 月には、同委員会及び同部会に対し「情報公開法要綱案 (中間報告) に対する意見書」を提出し、また、1997 年 3 月には「情報公開法の早期制定と要綱案についての意見書」を、同年 11 月には「電子情報公開法の提言」を、それぞれ政府及び各政党会派に提出しております。

    現在、国会には、政府提出の「行政機関の保有する情報の公開に関する法律案」(以下、政府案といいます) と民主党・自由党・新党平和提出の「行政情報の公開に関する法律案」(以下、三党案といいます) と共産党提出の「情報公開法案」(以下、共産党案といいます) が提出され、継続審議されておりますが、当協会は、日本の情報公開法の制定がいよいよ間近に迫ったことに強い関心を持っています。

    特に、政府案においても、要綱案をふまえて、何人にも請求権を与えている点、国の行政機関をすべて実施機関に含めている点、対象文書を決裁、供覧等の事案処理手続を経たものに限定せず「当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、行政機関が保有しているもの」に拡げている点、施行日前文書も対象としている点、行政文書の管理に関する規定をおいている点、不服審査会が指定する方式での処分理由を求める手続や行政文書そのものを見聞して審査する権限を置いた点など、これまでの情報公開条例の水準を超えるものがあり、これらの点では、評価できるものと考えます。さらに、三党案や共産党案には、当協会が「情報公開法の早期制定と要綱案についての意見書」等により、よりよい情報公開法のための参考となることを求めた意見がおおむね反映されたものであり、当協会は、できる限り、三党案や共産党案に沿った情報公開法の早期制定を強く求めます。

  2. ところで、情報公開法が先の通常国会及び臨時国会において制定されなかったことは、早期制定を求めるものとして、誠に残念だといわざるをえません。次期国会において、必ず情報公開法が制定されることを強く求めるものです。衆議院の野党側では、早期制定のために三党案と共産党案を取下げ、政府案の修正案を提出する方針であるとのことですが、早期制定のためには修正案でもやむをえないものと考えております。次期国会においては、衆議院参議院共に、政府案修正案が充分に審議されたうえで、情報公開法が制定されることを強く求めます。このうち、特に、訴訟管轄と手数料については徹底審議のうえ、以下に述べるとおり、利用しやすい情報公開制度にすべきです。

  3. まず、訴訟管轄については、情報公開法の本文に「地方管轄」の特例を追加することを求めます。

    政府案では、東京の中央省庁にしかない情報を不開示とすると、不開示処分取消訴訟は東京地裁にしか提起できないということが問題です。「地方管轄」の特例は、地方在住者が訴訟提起の費用等の負担により司法救済の妨げとならないようにし、情報公開法を有効なものとして利用するために、必要不可欠です。与党側からは同一の情報公開を求める訴訟が各地で提起された場合、裁判所によって判断が分かれることがありうるので妥当でないとの意見もありますが、関連請求に係る訴訟は、国からの申立て又は裁判所の職権でその訴訟を他の裁判所に移送することができますから (行政事件訴訟法 13 条)、そのような不都合は回避できます。

    国会の参考人からの意見聴取においては、不開示処分を受けた請求者の住所地で裁判を提起できるようにする規定を、時間をかけて行政事件訴訟法の改正として行うべきか、「情報公開法のこの審議の中で特例をつくってしまえばそれでいいのか」、という社民党深田肇議員の質問に対して、塩野宏・元行革委行政情報公開部会部会長代理は、「それは国会の御判断だと思います」と述べ、野党案のように訴訟管轄の特例を設けることは、理論的にも不当なものでないことを明らかにしています。

    仮に原告 1 名、代理人 2 名が情報公開訴訟を提起し東京地裁が管轄裁判所とされた場合には、交通費だけで大阪市民の場合には約 134 万円、那覇市民の場合には約 287 万円が必要となるとの試算がなされていますが (情報公開法を求める市民運動調べ、朝日新聞 1998 年 3 月 26 日)、これでは、地方在住者の知る権利、裁判を受ける権利が実質的に制限されてしまいます。アメリカやフランスの場合と同様に、不開示処分に対し、東京と地方の区別なく、日本全国のどの地域においても平等かつ容易に司法救済を受けられるようにすべきです。

  4. 手数料については、新聞報道によれば、政府案 16 条を修正し、「前項の手数料の額を定めるに当たっては、できる限り利用しやすい額とすることに配慮しなければならない。」との規定を追加し、また、政令における開示手数料の定め方として、開示を受ける者にとって、実質的に申請時の手数料が無料となるように、開示の手数料 (コピー代等) の額を定めること、具体的には、申請時の手数料に相当する額を限度として、開示手数料の額を減額するように、政令で手数料の額を定めるものと説明されています。その例として、申請時の手数料を 500 円、コピー代 1 枚 20 円とするとコピー 25 枚 (20 円 × 25 枚 = 500 円) まで無料、26 枚なら 20 円、以下、1 枚ごとに 20 円の手数料を取るとの案が検討されていると聞いています。政府案 16 条の修正が正式に提案されるのであれば、原則としてこの修正案に賛成します。ただし、政令による開示手数料についての定め方は、まだ国会で審議されていませんので、事実上政令の内容を拘束するために上記の例を充分に審議検討するよう求めます。

    なお、この場合、申請時の手数料 500 円は高すぎます。開示請求者が全部不開示決定を受けた場合でも一律 500 円を徴収されることは、開示決定により情報を入手する場合と比べて極めて不公平です。上記の例によるとしても、申請時の手数料は 200 円にとどめるべきです。

  5. その他、野党側で検討されている政府案修正案が衆議院及び参議院において、それぞれ充分に審議され、地方管轄の規定や手数料をはじめとする修正により真に利用しやすい情報公開制度となることを求めます。

    なお、衆議院では、院の構成上、政府案が手数料規定の修正を除き、本文が原案どおり可決された場合にそなえ、付帯決議案も検討されているということですが、仮に原案どおり可決されるとしても、衆議院の付帯決議としては、1998 年 11 月 8 日衆議院内閣委員会における「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律案に対する附帯決議」と同様に、情報公開法の見直しにあたって検討されるべき事項を網羅した充実した内容のものにしていただきたく、また、これに関連して、政府案附則 3 条も、下記のとおり修正されることを求めます。施行後 4 年を目途とする見直しは、単に運用改善にとどまらず、地方管轄の規定等についての法律改正をも含むものであるべきでだからです。

以上

附則 (案)

  1. 政府は、この法律の施行後 4 年を目途として、この法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な法制上その他の措置を講ずるものとする。


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