
『日本女性の外性器』出版問題に声明
1997 年 9 月 6 日
私たちは、『日本女性の外性器 ―― 統計学的な形態論』(フリープレスサービス出版)
に関し、著者である元滋賀医科大学助教授笠井寛司氏の診療中の行為及び出版には、患者に対し重大な人権侵害があったのではないか、また、同出版は学術目的とは言い難いのではないか、との疑いについて、笠井寛司元助教授、滋賀医科大学、有限会社フリープレスサービスに対し、質問状を提出し、調査を行ってきた。これまでの調査で明らかになった事実だけでも、人権侵害は明らかであり、このまま放置すれば、さらなる人権侵害を重ねる可能性のあることを否定できないので、以下のとおり声明を発表する。
1997 年 9 月 6 日
社団法人自由人権協会
同大阪・兵庫支部代表理事
自由人権協会京都
声明
笠井元助教授は、患者として来院した女性の外性器を無断撮影し、かつその同意を得ることなく、その写真をおよそ学術書とはいえない内容で出版したことにより、医療を求める女性を不安に陥れ、女性の尊厳を傷つけた。よって笠井元助教授はそのことを率直に反省し、責任を明らかにすべきである。
有限会社フリープレスサービスは、患者の個別的な同意が確認できない本書の再版を行うべきではない。
(声明の理由)
- 笠井元助教授は、1961 年に京都大学医学部を卒業し、1962 年医師となって以来、産婦人科医として医療に従事してきた。1969
年より、京都バプテスト病院医師、1976 年滋賀医科大学産婦人科助教授として、医療、教育にたずさわり、1996
年 3 月滋賀医科大学を退職した。
1995 年 9 月に出版された『日本女性の外性器』(フリープレスサービス出版)
によると、対象となった患者は 8330 例であるというが、それは、笠井元助教授が自ら中心となって診療した患者の殆ど全例に近いと推定される。また、滋賀医科大学特別調査委員会においても、笠井元助教授が口頭又は文書で患者の同意を得て、女性の外性器の写真撮影を行っことは認められていない。従って、笠井元助教授は、産婦人科医としての立場を利用し、医行為に便乗して患者に無断で、女性の外性器の写真撮影及び計測を行ったと判断せざるを得い。
- この行為は、患者の治療とは無関係であり、医療行為ではない。仮に学術研究を目的にとしたものであったとしても、それを患者の同意なしに行うことは絶対に許されないものである
(1975 年世界ヘルシンキ宣言)。
笠井元助教授は、本書「はじめに」(4 頁) の中では「本書は一般素人向けのものではなく、医療現場にある関係者、とりわけ性医学の専門書や
Sex Counselor あるいは Sex Therapist として活躍しておられる諸兄姉のためのに些かなりとも役立てば幸いと考えて著した」と述べている。しかし、「追憶と謝辞」(410
〜 414 頁) の中では、「(外性器の計測を始めて後) ・・・・・ これは片手間のお遊びには事欠かないと、自分の趣味として始めることにしたのが病みつきになってしまった
(412 頁)」と述べている。
また、本書の内容を検討してみると、外性器写真の提示方法、配列方法、提示写真の種類、記事等に多数に亘って学術書とは言い難い点が見いだされる。
さらに、滋賀医科大学は、笠井元助教授の「非倫理的な行為を見抜けず、ないがしろにしたことは強く戒められるべきこと」であると認め、同助教授に対し、1996
年 1 月 16 日付で、「本学付属病院産婦人科の診療中における患者さんの同意を得ない写真撮影及びその著述を通じて、社会的批判が寄せられるにいたり、本学の教育・研究・診療に対し、その信用が著しく傷つけられたことは、誠に遺憾であり、今後は再びかかることのないよう、特に努められたい」旨の訓告を行っている。
しかも、出版にあたっては、笠井元助教授及び有限会社フリープレスサービスにおいて、被写体となった患者の出版掲載についての個別的な同意を得たことは認められない。
従って、笠井元助教授は、医療行為に便乗して、患者本人の同意を得ることなく、医療外の目的で撮影、計測をし、その結果の一部を出版したことになる。
- 笠井元助教授は、医療の場において人権侵害行為を行ったのみでなく、女性外性器写真を
多数無断掲載したことにより、女性の尊厳を著しく傷つけたと言わざるを得ない。のならず、全国の女性の産婦人科医療への不信を募らせたことの責任も重大である。
よって、笠井元助教授は、このことを率直に反省し、責任を明らかにすべきである。
- 有限会社フリープレスサービスは、以上の事実を十分に認識し、出版掲載にあたり、患者のプライバシーの保護その他の人権保障の観点から、患者の個別的同意が確認できない本書再版を行うべきでない。
以上
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