情報公開法の早期制定と要綱案についての意見書

1997 年 3 月 14 日


1997 年 3 月 14 日

内閣総理大臣 橋本龍太郎殿
総務庁長官  武藤嘉文殿
自由民主党  御中
新進党    御中
民主党    御中
日本共産党  御中
社会民主党  御中
太陽党    御中
新党さきがけ 御中
民主改革連合 御中
新社会党   御中

社団法人 自由人権協会
代表理事 山田卓生
代表理事 内田剛弘
代表理事 金城清子

情報公開法の早期制定と要綱案についての意見書

当協会は、あらゆる人々の自由と人権を擁護するという立場から情報公開制度の研究を行い、既に 1979 年 9 月には日本で初めて「情報公開法要綱」を発表し、以来、情報公開制度の確立を提唱してきました。1995 年 12 月には、行政改革委員会の行政情報公会部会 (以下、部会といいます) における要綱案がよりよいものとなるよう「JCLU 行政情報公開法モデル大綱」(以下、モデル大綱といいます) を立案し、部会に対し意見書として提出しました。さらに、1996 年 7 月には、同委員会及び同部会に対し「情報公開法要綱案 (中間報告) に対する意見書」を提出しております。

行政改革委員会が 1996 年 12 月 16 日に「情報公開法要綱案」(以下、要綱案といいます) を内閣総理大臣に意見具申したことにより、日本の情報公開法の制定がいよいよ間近と期待されるようになりました。特に、要綱案は、何人にも請求権を与えている点、国の行政機関をすべて実施機関に含めている点、対象文書を決済、供覧等の事案処理手続を経たものに限定せず「当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、行政機関が保有しているもの」に拡げている点、施行日前文書も対象としている点、行政文書の管理に関する規定を置いている点、不服審査会が指定する方式での処分理由を求める手続や行政文書そのものを見聞して審査する権限を置いた点等、情報公開条例の一般的水準を超えるものがあり、これらの点では、評価できるものと考えます。当協会は、永年の懸案であった情報公開法の早期制定と、本意見書の修正の意見をよりよい情報公開法のための参考とされることを求めます (修正意見のうち、要綱案の修正部分は 赤色 で示しました。)。

なお、当協会作成の上記モデル大綱については 1996 年 6 月「解説」を作成し発表しておりますので、これを改めて本意見書に添付します。また、モデル大綱と解説の起草にあたったメンバーは別途「情報公開法要綱案(中間報告)の批判的検討」(情報公開法理論研究会、法律時報 68 巻 8 号 24 ないし 36 頁) 及び「行政情報公開部会報告 (最終報告) の批判的検討」(同会、同 69 巻 1 号 72 ないし 86 頁) を発表しております。これらもあわせて参考にしていただければ幸いです。

情報公開法要綱案の修正の意見

第 1 章  総則

第 1  目的 [修正]

この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する国民の権利につき定めることにより、行政運営の公開性の向上を図り、政府の諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の政府情報を知る権利を保障し、行政の監視・参加の充実に資することを目的とするものとすること。

第 2 定義 [追加・修正]

この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによるものとすること。

(1)  行政機関 次に掲げる機関をいう。

ホ  法律により直接に設立された法人若しくは特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人のうち、総務庁設置法第 4 条、第 11 号の規定の適用を受けない法人 [追加]

(2) 行政文書 行政機関の職員が職務上作成し又は取得した文書、図画、写真、フィルム、磁気テープその他政令で定めるものであって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、行政機関が保有しているものをいう。ただし、一般に容易に入手することができるもの又は一般に利用することができる施設において閲覧に供されているものを除く。 [ロを削除して修正]

第 2 章 行政文書の開示

第 5 行政機関の開示義務 [修正・追加]

1  行政機関の長は、行政文書の開示の請求 (以下「開示請求」という。) があった場合は、開示請求をした者 (以下「開示請求者」という。) に対し、当該行政文書を開示なければならないものとすること。ただし、開示請求に係る行政文書に不開示情報が記録されているときは、当該行政文書を開示しないことができるものとすること。 [修正・追加]

2 開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合であって、当該部分が当該部分を除いた部分と容易に区分することができるときは、行政機関の長は、開示請求者に対し、当該部分を除いた部分につき開示しなければならない。ただし、当該分を除いて開示することが 開示請求 の趣旨に合致しないと認められるときは、この限りないものとすること。[修正]

第 6 不開示情報 [修正・追加]

1 第 5 に規定する不開示情報は、次の各号に掲げる情報とすること。

(1) 特定の個人が識別され又は他の情報と照合することにより識別され得る情報のうち、個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得その他個人に関するもの (事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く)。ただし、次に掲げる情報を除く。[本文及びハ、ホを修正]

法令の規定により又は慣行として公にされている情報又は公にすることが予定されていると認められる情報

氏名その他特定の個人が識別され得る情報の部分を除くことにより、開示しても、本号により保護される個人の利益が害されるおそれがないと認められることとなる部分の情報

公務員の職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員の 官職及び氏名に関する情報

人の生命、身体、健康、財産又は生活を保護するため、開示することがより必要であると認められる情報

当該個人が開示することに同意していると認められる情報

(2) 法人その他の団体 (国及び地方公共団体を除く。以下「法人等」という。) に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、開示することにより当該法人等又は当該個人の競争上の地位、財産権その他正当な利益を著しく害するおそれがあるもの。ただし、当該法人等又は当該個人の事業活動によって生ずる人の生命、身体若しくは健康への危害又は財産若しくは生活の侵害から保護するため、開示することがより必要であると認められるものを除く。[ロを削除して修正。仮にロを削除しないとしても、「行政機関からの要請 (当該情報の提出を義務づける法令上の権限がある場合を除く。) を受けて、公にしないとの約束の下に、任意に提供されたもので、法人等又は個人における常例として公にしないこととされているものであって開示請求時において当該約束の締結が状況に照らし合理的であると認められるもの」と修正すべきである。]

(3) 開示することにより、国の防衛に対し特定しうる重大な損害を生ずることが明らかな情報、他国若しくは国際機関との信頼関係を著しく損なうことが明らかな情報又は他国若しくは国際機関との交渉上国の重大な利益を害することが明らかな情報 [修正]

(4) 開示することにより、犯罪の予防・捜査、公訴の維持、刑の執行を 著しく害することが明らかな情報 [修正]

(5) 行政機関内部又は行政機関相互の審議・検討又は協議に関する情報 (事実に関する情報を除く。) であって、開示することにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が 不当に損なわれ 又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を 及ぼすもの [修正]

(6) 監査、検査又は取締りの計画及び実施細目、争訟又は交渉の方針、契約の具体的内容、試験の問題、行政調査、学術研究、人事管理、現業の事業経営その他の 行政機関の事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に 著しい支障を生ずるもの [修正]

2 前項各号に該当すること及び各号ただし書に該当しないことについて、裁判所は初審的に審理することとし、その立証責任は行政機関の長が負担すること。[追加]

3 第 1 の目的に照らし、第 1 項は、必要な最小限度においてのみ適用すべきであって、いやしくもこれを拡張して解釈するようなことがあってはならない。[追加]

第 8 行政文書の存否に関する情報 [修正・追加]

1 開示請求に対し、当該開示請求に係る行政文書が存在しているか、又は存在していないかを答えるだけで、第 6 (1) 、 (3) 又は (4) により保護される利益が不開示情報を開示した場合と同様に 著しく 害されることとなるときは、行政機関の長は、開示請求に係る行政文書の存否を明らかにしないで、請求を拒否することができるものとすること。[修正]

2 第 1 の目的に照らし、前項は、必要な最小限度においてのみ適用すべきであって、いやしくもこれを拡張して解釈するようなことがあってはならない。[追加]

第 15  手数料 [修正]

1 行政文書の開示に関する手数料は、実費を勘案し、政令で定めるところによるものとすること。

2 行政機関の長は、開示請求者の 経済的困難、請求の目的が専ら学術的研究のためのものであって営利的なものにならないとき その他特別の理由があると認めるときは、その数科を免除し、又は減額することができるものとすること。[修正]

第 3 章 不服申立て

第 20 不服審査会の調査権限 [削除]

1 不服審査会は、諮問をした処分庁又は審査庁 (以下「諮問庁」という。) に対し、開示請求に係る行政文書の提出を求め、事件の審議にあたる委員をして、不服申立人に閲覧させずにその内容を見分させることができる。この場合において諮問庁は、当該行政文書の提出を拒むことはできないものとすること。[「必要と認めるときは」を削除]

2 不服審査会は、諮問庁に対し、請求拒否の決定があった行政文書又はその部分と請求拒否の理由とを不服審査会の指定する方式により分類・整理することその他の方法により、諮問に関する説明を求めることができるものとすること。[「必要と認めるときは」削除]

3 前 2 項に定めるもののほか、不服審査会は、事件に関し、不服申立人、参加人及び諮問庁 (以下「不服申立人等」という。) に意見書又は資料の提出を求め、参考人に陳述を求め又は鑑定をさせ、その他必要な調査をすることができるものとすること。

第 4 章 訴訟 [追加]

第 23 土地管轄 [追加]

1 開示請求に対する決定に対しての訴訟は、行政事件訴訟法の抗告訴訟によること。

2 前項の抗告訴訟は、行政事件訴訟法 12 条の管轄する裁判所に加えて、請求人の住所地の裁判所に提起することができること。

第 24 裁判所の調査権限 [追加]

1 開示請求に対する決定に対しての訴訟においては、裁判所は、行政機関の長に対し、請求の拒否があった行政文書又はその部分と請求拒否の理由とを裁判所の指定する方式により分類・整理することその他の方法により、請求拒否の内容と理由について釈明を求めることができるものとすること。

2 前項の釈明によってもなお必要があると認めるときは、裁判所は、開示請求に対する決定の取消を求める当事者の申立てにより、行政機関の長に対し開示請求に係る行政文書の提出を求め、公開の法廷において、開示請求に対する決定の取消を求める当事者に閲覧させずにその内容を見分することができるものとし、開示請求に対する決定の趣旨が害されない限度において、前項の裁判所の指定する方式により分類・整理して調書に記載することができるものとすること。この場合において、行政機関の長は、当該行政文書の提出を拒むことができないものとすること。

第 5 章 補則 [第 4 章より繰り下げ]

第 25 行政文書の管理 [第 23 より繰り下げ]

第 26 利便の提供・運用状況の公表 [第 24 より繰り下げ]

第 27 情報公開の総合的な推進 [第 25 より繰り下げて修正]

政府は、この法律に定める行政文書の開示のほか情報の提供、情報の電子計算機処理及びこれに基づく通信手段の整備 その他の情報公開に関する施策の充実を図り、国民にする情報公開の総合的な推進に努めるものとすること。

第 28 情報公開運営審議会 [追加]

1 この法律の公正かつ適正な運用を確保し、情報公開の総合的な推進を図るために、総理府に、情報公開運営審議会を置くものとすること。

2 前項の目的のために、情報公開運営審議会は、不開示情報に関する事項、行政情報の作成、整理及び保存に関する事項、行政情報の検索体制の整備に関する事項その他行政報の公開に関する重要事項を調査審議し、その改善について内閣総理大臣に建議するものとすること。

第 29 地方公共団体の情報公開 [第 26 より繰り下げ]]

第 30 関係法律との調整 [第 28 より繰り下げ]

(要綱案第 28 関係法律との調整については、繰り下げて第 30 となる。第 30 についての修正を求めるものではないが、具体的調整においては、原則として情報公開法と関係法律の開示手続を重畳的に適用することとし、この調整の名の下に、脱法的に情報公開法の対象外情報をつくることのないようにすべきである。)

第 31 施行に伴う措置 [第 29 より繰り下げて、第 27 を削除したうえで 3 を追加]

3 第 2、(1)、ホ の特殊法人について、この法律を適用するにあたり、その性格及び業務内容に応じて情報の開示及び提供が推進されるよう、情報公開に関する法制上の措置そ他の必要な措置を講ずるものとし、特殊法人についてはこの法律の施行後2年を経過した後にこの法律を適用するものとすること。[追加]

修正の意見の理由

  1. 要綱案第 1 目的について

    要綱案では、法の目的として、「国民主権にのっとり・・・国民による行政の監視、参加の充実に資すること」を掲げるものの、「知る権利」については触れていない。しかし、情報公開法は、行政の監視、参加を目的とすると共に、より根本的には、憲法上の知る権利を保障するためのものであり、このことが、不開示事項をはじめとする各条項の解釈に反映されるべきである。

    知る権利が憲法 21 条の表現の自由の内容をなすことは今では常識的な解釈であるし、世界人権宣言 19 条や国際人権規約 B 規約では知る権利がより明確に定められている。情報公開法は、こうした普遍的な人権としての知る権利に基づく公開請求権そのものを保障するための「人権具体化法」である。1996 年 11 月に制定された韓国の情報公開法にも知る権利の保障が規定されている。開示請求権は行政が正しく行われるための「手段」であってそれ以上のものではないという解釈を招きかねないように、法の目的に政府の説明責務と共に知る権利を明記することが必要である。

  2. 要綱案第 2 定義でも特殊法人は対象外とされ、「その性格及び業務内容に応じて情報の開示及び提供が推進されるよう、情報公開に関する法制上の措置その他の必要な措置を講ずる」という規定 (第 27) を置くにとどまっている。

    「もんじゅ」の事故を起こした動力炉・核燃料事業団や消費者被害の情報が集まる国民生活センターのように国民生活の安全に重大な影響を持つ特殊法人、本来行政がなすべき業務を行っている特殊法人、税金によって財政の大部分をまかなっている特殊法人も多い。特殊法人も法の適用対象とすべきである。

    よって、上記意見のとおり、第 2 定義、(1) ホ に特殊法人を規定し、その意義については、「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」における特殊法人と同様のものとする。特殊法人の性格及び業務内容に即して施行のための充分な準備を行うために付則においてその準備期間を明記しておけばよい。

  3. 対象文書について、「要綱案の考え方」においては、「組織としての供用文書」であれば、決裁、供覧等を終了した文書に限らない旨を明示している。したがって、「行政機関が組織的に用いるものとして保有している」とは、私的なメモを除くという程度の意味であって、決裁、供覧に代わる制限を課する意味ではないと理解でき、この点は評価に値する。しかし、「組織的に用いられる」との表現が制限的な趣旨ではないとしても、運用上、これを理由に対象文書を狭めようとする解釈が現われないとも限らないから、政令以下の制定にあたっては、そのような解釈がなされることのないような取扱いがなされるべきである。

    また、要綱案第 2 (2) ただし書ロ「公文書館等において歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別に保有しているもの」は、対象文書を狭めるよう濫用される可能性が高いので採用されるべきではない。この種の情報は「一般に利用することができる施設において閲覧に供されているもの」として充分に保護することができる。

  4. 「要綱案の考え方」においては、要綱案第 6 の不開示情報に該当する情報については「開示してはならない義務」があるとされている。しかし、これまでの地方自治体の条例の非公開条項は、基本的には、非公開とできる事由を定めるもので、裁量による開示を排除するものではなかった。「開示してはならない義務」のある不開示情報について、すべて開示禁止として運用されると、情報公開法が秘密保護法になりかねない。したがって、情報公開法においても、裁量による開示を排除しないことをより一層明らかにするために、不開示条項は「開示しないことができる情報」として規定すべきである。

  5. 要綱案第 5、2 は、部分開示をできる限り行うことによって、行政機関の開示義務が尽くされることになるのであり、それは開示請求者の請求目的に沿うようになされる必要がある。要綱案における「制度の趣旨」では、「開示請求の趣旨」を無視されて、部分開示義務が尽くされない危険があるから妥当ではない。

  6. 要綱案第 6 不開示情報、(1) の個人情報については、

    1. 個人の識別可能性をより制限的にすべきである。

      そもそも個人の識別可能な情報を非公開とする規定の仕方は、プライバシー保護という本来の趣旨を超えて広範囲の個人情報を一律に非公開としてしまうという問題があり、非公開とする範囲に絞りをかける必要がある。

      ところが、要綱案では、「他の情報と照合することにより識別され得るもの」をも原則非公開とするものであり、これでは非公開範囲が無限定なまでに広くなってしまう。「他の情報と照合することにより識別され得るもの」は削除すべきである。

    2. ただし書による公開も、より広く規定すべきである。たとえば、ハの公務員についての例外を「職に関する情報」に限定すべきではない。そもそも公務員の職務又は地位に関する情報は、公人としてプライバシー保護の制限を受けるものであるから、限定を付けるまでもなく個人に関する情報から除外すべきである。

    3. 本人開示請求を認めるべきである。

      本人が請求した場合には、個人情報であっても不開示とする理由はない。本人開示請求権は、本来自己情報コントロール権の一環として個人情報保護制度で規定されるべきものであるが、現行の個人情報保護法は自己情報の開示請求を電算機処理情報のうちで官報に公示されたものに事実上限定しており、ほとんど利用できないものであり、同法の制定時に 5 年後の見直しを付帯決議としていたが、総合的な個人情報保護法制定の見通しが立っていない。このような現状では、当面、上記意見のただし書ホのように、情報公開法の中に本人開示請求を可能にする規定を設けるべきである。

  7. 要綱案第 6 不開示情報、(2) 法人情報については、

    1. 企業活動も財産権・営業の自由等の憲法上の保護をうけるが、企業の利益に重きを置くと、情報公開制度は形ばかりのものになってしまう。このような観点からすれば、要綱案第 6、(2)、イ の「その他正当な利益を害するおそれがあるもの」という規定は緩やかに過ぎる。「正当な利益を著しく害することが明らか」といった限定的な表現にすべきである。

    2. 要綱案第 6、(2)、ロの「公にしないとの約束の下に任意に提供されたもの」についての規定は、情報の性質を問うことなく、非公開特約という秘密指定によって企業側の意向で当該情報を不開示とする道を開くという点で容認できないものであり、削除すべきである。

      要綱案の同ロは、中間報告第 6 (2) の「公にしないとの約束の下に任意に提供され、現に公にされていないもの」よりも該当性の要件を厳格にしたものであって、それ自体は評価はできるが、その種の情報は実際には「正当な利益」として同イによって保護されるものであって、それ以上にロを必要とはしないものと解すべきである。

      同ロは、アメリカ情報自由法の適用除外事由 (b) (4) に関する判決で示されたクリティカル・マス基準から影響を受けており、国際協調主義の観点から採用したとされている。しかしながら、クリティカル・マス基準については、アメリカ国内でもさまざまな批判のあることも見逃すことはできない。たとえば、行政機関は、当該情報が慣行上公衆に開示されていないかだけを確認すればよいことになり、情報自由法の下で情報が秘匿されることになる、という指摘や、立法過程においても任意提供と強制提出とを区別する意図はなかったのに、クリティカル・マス基準は、ナショナル・パークス基準以前にあった「秘密の約束」基準や「秘密の期待」基準を採用しようとしている、という指摘等がある。

      クリティカル・マス基準については、未だにアメリカでも賛否両論あるという事実認識に立って要綱案を見るとき、不開示情報第 6 (2) ロ は削除されるべきである。

      それでも、要綱案の修正というレベルで検討するなら、立法に際しては、前記修正案のとおり、以下の点を修正すべきである。

      1. 第 6 (2) ロ「行政機関からの要請を受けて」の後に、「(当該情報の提出を義務づける法令上の権限がある場合を除く)」を付加する。これによって、提出を義務づけられている場合は該当しないことを、より明確にすることができる。

      2. 第 6 (2) ロ「常例として公にしないこととされているもの…合理的であると認められるもの」とあるのを、開示請求時における合理性の判断をより明確にするために、「常例として公にしないこととされているものであって、開示請求時において当該約束の締結が状況に照らして合理的であると認められるもの」に変更する。

  8. 要綱案第 6 不開示情報、(3) 国の安全等情報は、

    1. 「国の安全」は「国の防衛」とすべきである。

      国の防衛、外交に関する不開示事項の必要性は否定できないとしても、これらを「聖域」扱いすることは許されない。この条項では、それぞれを極めて広く規定している。しかも、「・・と認めるに足りる相当の理由がある情報」という、立証責任を軽減する表現がされている。

      「国の安全」は、「要綱案の考え方」において限定的な解説がなされているにもかかわらず、極めて抽象的で拡大解釈を招くことは容易に予想できる。より限定して「国の防衛」とすべきであり、「国の防衛に対し特定しうる重大な損害を生ずることが明らかな情報」のみを不開示とすべきである。ここにいう「国の防衛」とは、軍事的な直接および間接の侵略から国土、国民の生命、身体、財産を守ることをいい、政治経済秩序の維持などの利益までは含まない趣旨である。

    2. 「重大な支障」「信頼関係を著しく損なう」「重大な利益を害する」等のより限定的な表現によるべきであり、「・・・と認めるに足りる相当の理由がある」は削除すべきである。

      「他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ・・・他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ」は広きに失する。開示により「他国若しくは国際機関との信頼関係を著しく損なうことが明らか」なもの、あるいは「外交交渉上の重大な利益を害することが明らか」なもののみを不開示とすべきである。

  9. 要綱案第 6 不開示情報、(4) 犯罪捜査等情報は、

    1. 「その他の公共の安全と秩序の維持」という表現は用いず、より具体的にすべきである。

    2. 「支障を及ぼすおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある」との表現は緩やかに過ぎるので、「著しく害することが明らか」といったより限定的な表現によるべきである。

      犯罪の捜査や予防など、いわゆる「法と秩序」の維持にかかわる国家の活動は市民の生命・身体・財産を守るうえで不可欠なものであることから、これらの活動を阻害する場合に不開示とすることはありうるとしても、同時にこうした活動は逮捕などの絶大な強制権限や広範な監視活動等による市民の自由や人権への一定の制約をもたらすものであり、これに対する民主的コントロールのために情報公開の必要性が高い分野であることも忘れてはならない。要綱案第 6、(4) の規定は、「犯罪の予防・捜査」から始まって、「その他の公共の安全と秩序の維持」への支障まで含む広範な情報を「著しい」との限定を付さないで不開示とするもので、本来の趣旨を逸脱している。

  10. 要綱案第 6 不開示情報、(5) 行政機関内部等の情報は、

    1. 事実に関する情報は開示すべきである。行政の意思形成過程の論議の内容を一定範囲で不開示にする必要があるとしても、論議の前提となる事実については不開示とする理由はないので、除くべきである。

    2. 「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」は削除すべきである。それ以外の要件についても、「おそれ」は削除すべきである。

      「国民の間に混乱を生じさせるおそれ」という表現は、情報公開条例の運用上、非公開理由として乱発されてきた経緯があり、「不当に」という限定を付けても、なお濫用される可能性は高いので、削除すべきである。これに限らず、「おそれ」という文言は、抽象的な可能性があれば足りると解されかねないので、削除すべきである。

  11. 要綱案第 6 不開示情報、(6) 行政機関事務等情報は、

    1. 列挙されている「監査」「検査」等の各事項についてより制限的な表現にすべきである。

    2. 「支障を及ぼすおそれ」ではなく、「著しい支障を生じるもの」といった限定的な表現にすべきである。

      行政の運営・執行に関する情報のうち、性質上開示しにくいものとして、実施前の試験問題や争訟の方針についての打合せ資料などがある。しかし、条例の運用上、この種の条項は、極めて広く解釈運用され、規定の仕方自体も段々に広くなってきた傾向がある。単に行政運営上支障が生じるのではなく、「性質上」開示することと両立しにくい一定範囲の情報について「適正な執行に『著しい』支障を生じるもの」のみ不開示とすべきである。

      要綱案第 6、(6) に列挙された事項はあまりに広い上に「その他」のものまで含めていることで、限定の意味を失っている。「その他の」として例示の意味をより明確にすべきである。「支障を及ぼすおそれ」との表現も広すぎる。

  12. 国会、裁判所等の情報について、相手方の意向次第で不開示となる規定は設けるべきではない。

    要綱案では、国会、裁判所及び地方公共団体に関する情報については、情報公開法の立案を政府が行うに当たっては、行政機関の場合における不開示情報 (5) 及び (6) に相当するものを不開示情報とする旨の規定を設けることについて検討する必要があるとされている。しかし、その内容は必ずしも明らかではなく、不開示情報 (2) のような発想からすれば、これら相手方機関の意向を尊重して不開示とする規定を置くような議論がされかねない。しかし、本来これらの機関は行政機関と同様に情報を公開すべき立場にあるのであり、行政の情報公開の「足をひっぱる」がごときことは許されない。開示不開示はあくまで情報の内容による行政機関の実質的な支障の有無で決せられるべきであり、他機関の意向により不開示とする規定は設けるべきではない。

  13. 要綱案第 6 不開示情報、(1) ないし (6) は第 6、1 の (1) ないし (6) とし、修正案として、第 6 の 2 及び 3 を追加すべきである。

    情報公開制度は情報を公開するための制度であるから、公開しないことはあくまで例外であって、不開示を主張する側が主張立証責任を負うことになる。不開示情報が、ゆるやかに解釈運用されるなら、情報公開制度は「非公開制度」と化してしまうので、拡大解釈は許されず、文言に忠実に厳密に解釈運用されるべきである。

    判例も、最高裁三小平成 6 年 2 月 8 日判決 (判時 1488 号 3 頁) はこのことを具体的に述べ、大阪府水道部の懇談会費の公開請求の事案について、大阪府側において、当該懇談会がその内容により、企画調整事務又は交渉事務等にあたり、事業の施行のために必要な事項についての関係者との内容の協議を目的として行われたものであり、かつ当該情報の記録内容自体あるいは新聞等の他の関連情報と照合することにより、懇談会の相手方等が了知される可能性があることを、主張立証する必要がある、としている。不開示条項への該当について、具体的に主張しなければ、主張責任を尽くしたことにならず、主張自体失当として棄却を免れないし、そのうえで、主張を裏付ける具体的事実を立証しなければならないのである。 このことを情報公開法においても明らかにするため、明文化すべきである。

  14. 要綱案第 8 行政文書の存否に関する情報は、修正案第 8 の 1 として修正し、2 を追加すべきである。

    行政情報の存否を明らかにしないことができるとの規定は本来的には設けるべきではない。情報の内容によっては不開示とされることがあるとしても、どのような情報がどこにあるかは、例外なく明らかにするのが、国民主権及び民主主義からする当然の要請である。地方自治体の情報公開条例でも、行政情報の存否を明らかにしないことができるとの規定はないままに運用されてきた。したがって、このような規定の必要性自体大いに疑問である。具体例をあげて論ずるべきであり、仮に存否自体を公にできないものがあるとしても、それは個別法で例外規定を設けて対応するのが本来のあり方であり、情報公開法の中で、一般的にかかる規定を設けることは問題が大きい。

    アメリカ情報自由法上の判例において、またオーストラリアの情報公開法の条文においても、認められているのは、個人情報、防衛・外交情報、犯罪捜査情報に限定されている。したがって、仮に、特に情報公開法においてこの種の規定を設ける必要があるとしても、その場合には、上記意見のとおり、対象情報を限定し、かつ、例外的措置であることを明らかにするうえでも、「著しく」等を付して厳格にすべきである。

    さらに、破壊活動防止法 2 条のように濫用防止のための規定を設けるべきである。

  15. 要綱案第 15 手数料、2 については、情報公開制度が知る権利に由来するものであることからすれば、閲覧手数料は無料とすべきである。実際上も多額の閲覧手数料が制度活用を阻害している例が少なくない。謄写代等の実費負担はやむを得ないとしても、一般の有料コピーサービスを上回る額にすべきではない。また、実費についても、公益的利用の場合には減免できるようにすべきである。したがって、少なくとも、「請求の目的が専ら学術的研究のためのものであって営利的なものにならないとき」の費用の減免規定を設けるべきである。

  16. 要綱案第 20 不服審査会の調査権言のうち、1、2 については、いずれも「必要と認めるときは」を削除すべきである。不服審査会は、いわゆるインカメラ審理 (要綱案第 20、1) とヴォーン・インデックス類似手続 (同第 20、2) をとることが「できる」のであって、必要と認めないときは両手続はとらないこととしているのである。「必要と認めるとき」を要件にすることは、諮問庁が両手続を拒否する場合に同要件に該当しないと主張し、情報隠しの口実に使われる危険がある。したがって、これを要件とすべきではない。

  17. 第 4 章として訴訟の条項を追加し (したがって要綱案第 4 章補足は第 5 章に繰り下げとなる)、第 23 土地管轄の規定を追加すべきである。

    現行の行政事件訴訟法 12 条によれば、情報開示請求に対する処分の取消を求める訴訟は、行政庁の所在地の裁判所の管轄に属するとされている。

    しかし、各省庁の本庁にしかない情報を開示請求して不開示処分を受けたときに、東京でしか処分取消訴訟ができないのでは地方在住者の情報開示請求権の行使を訴訟手続面から制約し、不便を強いるものになりかねない。このため、要綱案においても、訴訟手続規定の制定は法務省や法制審議会の所轄であるという、いわゆるタテ割行政上の規制に気がねすることなく、独自に情報開示請求者の「知る権利」と「裁判を受ける権利」の保障の観点から、裁判管轄の規定を設けるべきである。

  18. 要綱案第 24 裁判所の調査権限として、ヴォーン・インデックス類似手続とインカメラ審理の規定を追加すべきである。

    情報公開訴訟において、充実した審理をするために、まず、ヴォーン・インデックス類似手続 (当該行政情報の様式、記載項目、記載内容及び非開示の具体的理由を記載した文書の提出を命じる手続) を採用するべきである。また、それでも不十分な場合には、インカメラ手続 (裁判所が直接、不開示文書の内容を見分で着る手続き) を採用しうるものとすべきである。

    公務員法上の守秘義務違反事件などの場合と異なり、情報公開請求事件の場合は、請求にかかる文書の不開示事由該当の主張に行政庁側が失敗すれば、公開判決になるため、ヴォーン・インデックス類似手続は積極的に活用されることが予想され、その導入には意義があると考えられる。しかし、権力間のチェック機能の仕組みは懐疑主義に基づくべきであり、ヴォーン・インデックス手続の運用において最終的には裁判所が当該文書を見聞できるというインカメラ審理の威嚇効果は、アメリカでも高く評価されている。また、要綱案において、不服審査会手続に、ヴォーン・インデックス類似手続及びインカメラ審理が採用されたことで、裁判手続に同等の手続を設けなければ、事実上司法審査が形式的になる可能性もある。司法審査が初審性を失わないためにも訴訟手続に、ヴォーン・インデックス手続とならんでインカメラ審理手続を入れることは不可欠である。

  19. 要綱案第 4 章補足は繰り下げて第 5 章としたうえで、第 23 行政文書の管理、第 24 利便の提供・運用状況の公表はそれぞれ繰り下げて第 25、第 26とし、さらに第 25 情報公開の総合的な推進も繰り下げて第 27 としたうえで、修正して、行政機関に、情報公開に関連する諸制度の拡充も含め、行政情報の公開の総合的な推進をすべき努力義務を規定すべきである。

  20. 要綱案第 28 情報公開運営審議会の規定を追加すべきである。なお、これにより第 26 地方公共団体の情報公開は第 29 に繰り下げ、第 27 特殊法人の情報公開は前記 2 のとおり削除することとなる。

    情報公開制度の運用状況をチェックし、制度自体や運用のあり方の改善を検討するための機関を、審査会とは別に設ける必要がある。地方自治体の情報公開条例では、審査会がこうした役割もになっているところもあるが、東京都など実際には制度の改善の提案まではできないのが実情であり、国の制度であればなおさら、運営について審議する機関を置く必要は大きい。

  21. 要綱案第 28 関係法律との調整については、繰り下げて第 30 となるが、具体的調整においては、次の点に考慮されるべきであり、この調整の名の下に、脱法的に情報公開法の対象外情報をつくることのないようにすべきである。

    1. 「要綱案の考え方」においては、調整措置の基本方針については、「情報公開法の適用について何らかの特例を認める場合にも、本法の趣旨に反しないことを基本としたうえで、本法を並行的に適用すると個別法に基づく事務の適正な遂行に支障が生ずる特別の事情があるかどうか、特例を認める文書(情報)の範囲等が法律上明確にされているかどうかなどの点について個別に検討すること」としている。

      また、「考え方」においては、「情報公開法は、何人にも行政文書の開示を請求する権利を認め、開示請求があった場合は、行政機関の長に不開示情報に該当するものを除き開示することを義務付けるものである」。すなわち、不開示情報に該当しないにもかかわらず、該当するものと判断して不開示とした場合には、開示請求者は、行政上及び司法上の救済を求めることができるところに制度の要諦がある。関係法律を優先適用し情報公開法は適用を除外するというのであれば行政上及び司法上の救済を求めることができなくなる。これが最も大きな問題である。したがって、行政上及び司法上の救済を求めることができない開示手続規定の法律については、特段の調整を行ことなく、情報公開法と関係法律の開示手続規定とを重畳的に適用することができるようにすべきである。

    2. 「考え方」は、公表権 (著作権法 18 条) 及び複製権 (同 21 条) との関係については、「情報公開法の円滑な運用の確保という新しい観点を加え、関係省庁において、必要な調整措置を検討する必要がある」としている。

      情報公開条例に基づく開示請求に対し、公表権侵害を理由として「明らかに不利益を与える」との法人情報の非開示事由に該当するとした裁判例や、建築設計図面の複権侵害を理由として法令秘の非開示事由を適用し、閲覧は認めるが謄写の交付は認めないという取扱いをする例など、著作権が情報開示請求権の行使の妨げとなることが既に指摘されている。

      要綱案どおりの情報公開法ができれば、著作権及び著作者人格権は、要綱案第 6、(2) の法人情報と、同第 6、(1) の個人情報の規定によって保護されることになる。法人著作は法人の「正当な利益」であり、個人の著作物は、個人を識別するものとしてプライバシーを中心とする個人の権利利益として保護されるのである。しかし、第 6、(1) 及び (2) のただし書の「人の生命、身体、健康、財産又は生活」の保護が「より必要であると認められる」場合や、第 6、(2) 本文の「正当な利益」が厳格に解釈される場合には、著作物であっても行政情報を開示する。その限りで、公表権や複製権の主張は、「権利濫用」として排斥されるのである。

      しかし、「公表権のように、とくに具体的に設けられた個別的人格権については、その制限のほうも立法により定められる必要があろう」「著作権(複製権)や複製の権限を保有しているわけではない行政機関はその複製を無断で行うことはできない」とする見解もある。この見解に重きをおけば、要綱案第 6、(1) 及び (2) のただし書の適用範囲は狭まり、情報公開条例の場合の問題と同様、情報公開制度の円滑な運用が確保できないおそれがある。そのようなおそれを避けるには、公表された行政文書 (著作物) が公共図書館等で閲覧、複製を認められる (著作権法 31 条など) との趣旨をさらに情報公開制度にまで及ぼしてはどうか。開示請求に対しての閲覧、複製は公表権及び複製権の例外として認められるという例外規定 (ただし、これによる複製の受領者がさらに複製することは別途複製権の侵害となろう) を設けることが検討されるべきである。

    3. なお、情報公開法と民事訴訟法の文書提出命令との関係は、何人に対しても一般に開示される情報は文書提出命令においては当然開示されるべきであり、これに加えて、情報公開法では開示義務のない不開示情報であっても、なお、民事訴訟手続においては特別に開示されるという規定であるべきである。

      要綱案は、行政文書の「原則開示の基本的枠組みを定め」、国家公務員法 100 条等の「秘密」に該当するという主張自体をもっては要綱案第 6 の (1) ないし (2) の不開示情報の具体的理由にならないとしている。同第 6 の (1) ないし (6) に該当する実質的な利益侵害や支障の生ずる蓋然性が存在しなければ不開示情報には該当しないのである。さらに、この不開示情報に該当する情報であっても、なお、文書提出命令により当該訴訟において提出されるという関係でなければ、文書提出命令は規定する意味がない。


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