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人種差別撤廃法要綱案
(JCLU外国人の権利小委員会試案Ver.1)

2003年3月15日

  1. 目的

    この法律は、すべての者による人種差別を禁止し、その被害の救済と予防を図るための措置を講じることにより、人種差別を撤廃し、もって、憲法上及び国際法上認められた人権が尊重される社会の実現に寄与することを目的とする。

  2. 定義

    この法律において「人種等」とは、人種、皮膚の色、民族、国籍又は国民的出身をいう。

    この法律において「人種集団」とは、特定の人種等を共有する者から構成される集団をいう。

    この法律において「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する者をいう。

    この法律において「人種差別」とは、次に掲げる行為を意味する。

    (1) (直接差別) 人種等に基づき、ある者が、同様な状況において他の者が扱われるよりも不利に扱われること。

    (2) (間接差別) 一見中立的な規定又は基準の適用が、特定の人種集団に属する者に対し他の者に比べて不利となること。但し、当該規定又は基準が、正当な目的により客観的に正当化され、かつかかる目的を実現する手段が必要かつ適切である場合を除く。

    (3) (ハラスメント) 人種等に関する行為であって、威嚇、侮辱、嘲りその他不快な環境を作り出す目的若しくは効果を有するもの、又は特定の者の尊厳を傷つける目的若しくは効果を有するものは、(1)の差別とみなす。

    次に掲げる行為は、人種差別にあたらない。

    (1) 国籍に基づき異なる取扱いをすることが真にやむを得ない場合において、目的のために必要な範囲で、異なる取扱いをすること。

    (2) ある職業の性質上、特定の人種等に関する特徴が決定的な職業上の条件に該当する場合であって、かかる条件を設ける目的が正当であり、かつ条件が目的に比例している場合において、かかる特徴に基づいて異なる取扱いをすること。

    (3) 人種等に関連する不利益を防止又は是正することを目的として、特別の措置をとること。

  3. 一般的差別禁止

    何人も、人種差別を受けない。

  4. 個別分野

    【 労 働 】

    1. 使用者は、以下の各号その他労働契約に関わり人種差別を行ってはならない。

      (1) 募集及び採用

      (2) 労働時間、賃金、休日休暇、労働安全衛生その他の労働条件

      (3) 配置及び昇進

      (4) 教育訓練

      (5) 福利厚生

      (6) 定年、退職及び解雇

    2. 職業紹介機関、職業訓練機関及び資格付与機関は、人種差別を行ってはならない。
    3. 労働組合、使用者団体及びその他の職業団体は、当該団体への加入及びその団体の構成員としての処遇において人種差別を行ってはならない。
    4. 国及び地方公共団体は、採用・昇進を含め、人種差別を行ってはならない。

    【 医療・社会保障 】

    1. 何人も、人種差別されることなく、到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利を有する。
    2. 何人も、人種差別されることなく、生命の維持及び回復しがたい健康被害の防止のために緊急に必要とされる医療を受ける権利を有する。この救急医療は、その者の在留または就労が不正規であるという理由で拒絶されてはならない。
    3. 何人も、人種差別されることなく、健康保険・厚生年金保険・国民健康保険・国民年金に加入することができる。
    4. 何人も、人種差別されることなく、生活保護を受ける権利を有する。但し、日本国内に在留して1年以内の外国人は、この限りではない。
    5. 何人も、人種差別されることなく、児童福祉、母子保健、乳幼児医療、感染症医療、障害者福祉、高齢者福祉、公衆衛生等に関する権利を享受することができる。

    【 教 育 】

    1. 何人も、あらゆる形態のあらゆる段階の教育において、人種差別を受けない。
    2. 国及び地方公共団体は、すべての適当な方法により、民族教育、母(国)語教育及び日本語教育を受ける機会を含む特定の人種集団に関する特別なニーズの充足に努めなければならない。
    3. あらゆる形態のあらゆる段階の教育は、人種差別を助長する内容を含むものであってはならない。特に学校教育においては、人種差別の撤廃を指向するものでなければならない。

    【 住 居 】

    何人も、自己若しくは家族のための住居又は事業用不動産の売買その他の処分又は賃貸借その他の利用において人種差別を受けない。

    【 物品等の提供 】

    何人も、小売店、輸送機関、宿泊施設、飲食店、劇場、公園その他の公衆の用に供されるあらゆる物品及び役務の提供を受けるについて、人種差別を受けない。

    【 団体加入 】

    何人も、公衆を構成員の対象とする団体への加入、退会、及び団体の構成員としての処遇において、人種差別を受けない。

  5. 公務員による差別及び差別の教唆禁止

    公務員は、公務に従事する者としての立場において、人種差別をしてはならない。

    公務員は、人に対し、人種差別を行うよう教唆してはならない。教唆とは、指示、命令、誘導その他方法を問わず、人に対し、特定の行為を実行する決意を生じさせ、又は生じさせるおそれのある働きかけをすることをいう。

  6. 国・地方公共団体の責務

    国は、憲法上及び国際法上認められた人権の実現のため、人種差別の撤廃のための施策を総合的に推進する責務を有する。

    地方公共団体は、地域社会における人種差別の撤廃を図るため、地方公共団体の運営及び事務の処理にあたりこの法律の趣旨を十分考慮するとともに、条例を制定し、その他地方公共団体において人種差別の撤廃のための施策を推進する責務を有する。

  7. 法律の広報・周知

    国及び地方公共団体は、適切かつ積極的な広報措置を講じることにより、この法律を広く周知させ、法律に関する情報へのすべての者のアクセスを容易にしなければならない。

  8. 法律の解釈の補足的手段としての国際人権法

     この法律の解釈及び適用にあたっては、日本において効力を有する国際人権規約、人種差別撤廃条約等の人権に関する条約について国際的に認められた一般的な解釈及び適用を考慮する。

解説


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