〔訂正等請求権〕
第12条 何人も、実施機関が保管している自己に関する個人情報に誤りがあるときは、当該実施機関に対し、当該情報の訂正を請求することができる。

[解説]
第1項:誰でも実施機関が保管している自己に関する情報に誤りがあるときは、その訂正を求めることができるとしたものです。自己に関する誤った情報が使用されることによって自己の知らないうちに多くの不利益をこうむる等重大な影響を受けることが十分に予想されます。また自己に関する誤った情報が実施機関に保管されていること自体、情報主体のコントロール権を侵害するものに他なりません。

自己に関する情報を自ら適切にコントロールするには、実施機関の保管する自己に関する誤った情報を訂正させることがどうしても必要になります。この訂正請求権はプライバシーの権利、情報コントロール権の中核をなす極めて重要な権利です。

2 何人も、実施機関が第6条〔収集の制限〕の規定によらないで、自己に関する情報を保管しているときは、当該実施機関に対し、当該情報を削除するよう請求することができる。

[解説]

第2項:誰でも実施機関が第6条の収集制限の規定によらないで、自己に関する情報を保管しているときには、当該情報の削除を求めることができるとしたものです。実施機関が収集してはならない情報を収集している場合、自ら自己に関する情報を適切にコントロールするためにはその削除を求めることが必要になります。この削除請求権があることにより、第6条の収集制限はさらに実効的なものになります。

3 実施機関は、前2項の請求に理由があると認めるときは、請求がなされたときから3週間以内に情報の訂正又は削除をしたうえ、その旨を請求者に通知しなければならない。

4 第1項の請求にかかる情報が誤りでないとき又は第2項の請求にかかる情報が第6条〔収集の制限〕の規定に従って収集されたものであるときは、実施機関は請求がなされたときから3週間以内に理由を明示したうえ、訂正又は削除を拒否する処分をなすことができる。

[解説]

第3項・第4項:訂正請求、削除請求があった場合、その請求に理由があるときは、実施機関は3週間以内に当該情報の訂正または削除を行わなげればなりません。また訂正請求にかかる情報が誤りでないとき、また削除請求にかかる情報が第6条の収集制限の規定にのっとって収集されたものであるときは、実施機関は3週間以内に理由を明らかにして、訂正、削除の拒否処分をすることができます。

5 前項の訂正拒否処分を行う場合、実施機関は当該情報について該当部分を特定して争いのある旨を記載し、訂正請求の要旨を添付しなければならない。実施機関は当該情報の提供にあたっては、訂正請求の要旨をあわせて提供しなければならない。

[解説]

第5項:訂正、削除の拒否処分がなされたときは、実施機関は当該部分について争いがある旨を記載し、訂正請求の要旨を添付しなければなりません。また、当該情報の提供にあたってはその異議申立の要旨をあわせて提供しなければなりません。これは、情報の提供先に対して、当該情報に誤りがある可能性を示し、さらに情報主体が不当な不利益をこうむらないようにするためのものです。

6 情報の訂正又は削除があった場合において、実施機関は訂正又は削除前の情報を他に提供していたときは、その提供先に対して、当該情報の訂正又は削除を通知しなければならない。

[解説]

第6項:情報の訂正又は削除があった場合には、その情報の提供先においてもその訂正又は削除がなされなければ、訂正又は削除を認めた意味がありません。したがって、訂正又は削除前に当該情報を他に提供していたときは、その提供先に対して、当該情報の訂正または削除を通知しなければならないことにしました。

 

〔目的外利用等の中止請求〕
第13条 何人も、実施機関が第7条〔利用及び提供の制限〕第1項の規定によらないで、自己に関する情報の目的外利用又は外部提供をし、又はしようとしているときは、当該実施機関に対し、その中止を請求することができる。

2 前項の請求があったときは、実施機関は、第3項の中止又は第4項の処分をなすまでの間、当該情報の目的外利用又は外部提供を一時中止しなければならない。但し、一時中止によって実施機関の公正な職務執行に著しい支障を生ずる場合を除く。

3 実施機関は、第1項の請求に理由があると認めるときは、2週間以内に当該情報の目的外利用又は外部提供の中止を決定したうえ、その旨を請求者に通知しなければならない。

4 第1項の請求にかかる情報が第7条〔利用及び提供の制限〕の規定に従って利用又は提供され、又はされようとしているものであるときは、実施機関は請求があったときから2週間以内に理由を明示したうえ、利用又は提供の中止を拒否する処分をなすことができる。

[解説]

第1項:誰でも、実施機関が第7条第1項の利用及び提供の制限の規定によらないで自己に関する情報の目的外利用または外部提供をしている場合またはこれをしようとしている場合に、その中止を求めることができるとしたものです。この中止請求権があることにより、第7条の利用及び提供の制限はさらに実効的になります。

第2項:中止請求がなされても、その中止までに時間がかがり、目的外利用又は外部提供が実際になされてしまっては中止請求を認めた意味がなくなってしまいます。そこで中止請求がなされたときは、実施機関は本条第3項の中止決定又は第4項の中止拒否の処分をなすまでの間、目的外利用又は外部提供を一時、中止しなければらないこととしました。

但し、一時中止によって重大な不都合を生じないように、実施機関の公正な職務執行に著しい支障を生ずる場合には、実施機関は一時中止をしなくともよいことにしました。

もっとも但書の要件が備わっていないのに、実施機関がその要件が備わっているものと主張して一時中止を免れようとすることも考えられなくはありません。しかし、この場合でも第1項で規定されている中止請求権を保全するため目的外利用・外部提供禁止の仮処分を求めることが可能と考えられます。

第3項・第4項:実施機関は中止請求に理由があると認めるときは、目的外利用又は外部提供を中止し、その中止した旨を請求者に通知しなければならないこととしました。また、請求にかかる情報の利用・提供が第7条[利用及び提供の制限]の規定にのっとっているときは、中止を拒否する処分をすることができます。

 

〔閲覧・謄写等の手数料〕
第14条 第11条第1項の個人情報の閲覧は無料とする。

2 第11条第1項によリ個人情報を再生、謄写又は複製する者は、当該再生、謄写又は複製に要する実費を負担しなければならない。

[解説]

閲覧は無料、謄写は実費負担とします。

 

〔審査請求〕
第15条 第11条第3項若しくは第6項、第12条第4項又は第13条第4項による処分を受けた者は、プライバシー保護審査会に対し、行政不服審査法に基づき審査請求をすることができる。

 

〔プライバシー保護審査会〕
第16条 プライバシー保護審査会(以下「審査会」という)を設置する。

2 審査会は、内閣総理大臣の所轄とする。

3 審査会は、本法による処分に対する審査請求について裁決を行う。

 

〔審査会の組織〕
第17条 審査会は、委員5人をもって組織する。

2 委員は、本法の目的を理解し公正な判断を行なうことができる者の中から、内閣総理大臣が両議院の同意を得てこれを任命する。

3 委員は独立してその服務を行う。

4 委員の任期は、2年とする。

 

〔委員長〕
第18条 審査会に委員長を置く。委員長は委員が互選する。

2 委員長は、会務を総理し、審査会を代表する。

 

〔審理・裁決〕
第19条 審査会の裁決は委員の過半数をもって決する。

2 第15条〔審査請求〕の審査請求に対する裁決は、請求を受理した日の翌日から起算して100日以内に行わなければならない。

 

〔司法審査等の教示〕
第20条 実施機関は、第11条第3項若しくは第6項、第12条第4項又は第13条第4項による処分を行ったときは、当該処分に対し第15条の審査請求及び行政事件訴訟法に基づく抗告訴訟の提起ができることを請求者に教示しなければならない。

[解説]

この法律・条例では、個人情報の閲覧、再生、謄写請求権(第11条)、訂正、削除請求権(第12条)、目的外利用等の中止請求権(第13条)を認めていますが、これに対する拒否処分が適法かどうかをチェックするシステムが完備されていないところでは、実施機関の意のままに処分がなされ、結局プライバシー保護は「絵に画いた餅」となってしまします。その意味で救済制度は極めて重要なものです。

チェックの方法としては、1、行政機関による不服審査、2、司法機関(裁判所)による司法審査(訴訟)の二つの方法があります。第15条から第20条は前者に関するものです。

拒否処分に対し、当該個人は不服申立てをなすことができます。この不服申立てについて理由があるか否かを審理するのがプライバシー保護審査会です。

審査会は行政機関ではありますが、申立に対する裁決をするという準司法的役割を果たす要請から、法案では独立の行政委員会としました(第17条第3項)。独立の行政機関としては他にも公正取引委員会、人事院、労働委員会等があります。

また、条例案では、この審査会を各執行機関の附属機関として設けましたが、議会や公安委員会など附属機関を設けることができない機関については、これに類似した第三者的機関を設ける必要があります。

審査の方法は、行政不服審査法の適用がありますから(第15条)、審査会は申立があれば口頭による意見陳述の機会を与えなくてはなりませんし(行政不服審査法第25条)、処分をした実施機関から処分の理由となった事実を証する書類その他の物件の提出を求めることもできます(同法第33条)。これらの規定を忠実に実践し、充実した審理がなされることが期待されます。しかし審理を充実する一方で、迅速な救済も必要ですので、裁決は請求を受理してからら100日以内になすこととしました(第19条第2項)。

地方自治体については、独立行政委員会は法律によらなけば設置出来ません。条例で設置できるのは、執行機関の附属機関としての審査会です。附属機関は諮問は行うが裁決は行えないとするのが通説的見解ですが、行政不服審査法第5条第2項が審査請求を行う機関を条例で定めることができるとしていること、地方自治法第138条の4第3項が附属機関として審査会を置くことができるとしていること、建築審査会など附属機関でありながら裁決権を付与されている例があることなどから、附属機関であっても裁決を行う審査会を設置することが可能と考えます。

 

〔司法審査〕
第21条 前条の抗告訴訟の判決は、事件を受理した日から100日以内に言渡すよう努めなければならない。

[解説]

不服申立と訴訟提起は何れでもまた両方ともすることができますし、その時間的前後も問いません。個人には当該個人情報の閲覧請求権、訂正等請求権、目的外利用等中止請求権があり、実施機関の処分はその権利に対する拒否の処分ですから、この訴訟は本質的に講学上の抗告訴訟(処分取消訴訟)です。

訴訟における審理は、個人情報保護の重要性、迅速性の要請から、公職選挙法上の百日裁判と同様の規定を設けました(公職選挙法第213条参照)。ただし、条例には訴訟に関する規定を設けることができませんので、条例案からは除外しました。

本人への非開示処分を訴訟で争う場合に、処分の当否を判断するため、裁判所が実施機関に当該個人情報の提出を命じ、非公開で(原告にも開示しないで)取り調べることができる旨の制度を設けることが考えられます。

この制度を設けるについては、裁判の公開原則(憲法第82条)、適正手続の原則との関係で検討しなければならない問題がありますので、私達の法案からは一応除外しました。

情報の非開示を争う訴訟において、当該情報自体を請求者側に開示することは事柄の性質上できないことであり、このような証拠の取調を非公開で行ったからといって、直ちに憲法第82条の裁判の公開原則に反するとはいえないと思われます。また、他方当事者に裁判所が取り調べる証拠が開示されないことについても、裁判所すら当該証拠を見ることができないまま裁判されるよりも、より公正な裁判が期待できると思われますが、裁判所が当該情報を取り調べたうえで請求者に不利な心証を形成した場合に、当該情報を見ることができない請求者が有効な反論ができないという問題があり、適正手続の点で問題とすべき余地が残されています(なお、この制度を導入する場合には、行政事件訴訟法などにおいて、証拠調べの方法等について特別の規定を設ける必要が生じます)。

 

〔プライバシー保護審議会〕
第22条 総理府の附属機関として、プライバシー保護審議会(以下「審議会」という)を設置する。

2 審議会は、第10条第2項の同意を与えるほか、プライバシー保護に関する制度の改善についての施策を立案し、内閣総理大臣及び実施機関に提言する。

 

〔審議会の組織〕
第23条 審議会は、委員15人をもって組織する。

2 委員は、本法の目的を理解する者の中から、内閣総理大臣が両議院の同意を得てこれを任命する。

3 第17条第4項〔委員の任期〕及び第18条〔委員長〕の規定は審議会に準用する。

[解説]

審議会を設ける目的は、第10条第2項(業務委託)の同意を与えるほか、プライバシー保護の基準や手続について、提言という形で広く人々の意向が反映されるためのチャンネルを設けておくことです。これにより、一旦成立した個人情報保護法・条例の改正や運用が官僚主導になってしまうことをチェックすることができるのです。法律及び条例成立後も広く人々の参加を確保するのがこの審議会というわけです。

 

〔報告義務〕
第24条 実施機関は毎年、本法による請求に応じた情報の件名及び件数、本法による請求を拒否した情報の件名、件数及びその理由並びに審査会の裁決その他本法の運用状況について、国会に報告し、かつ一般に公表しなければならない。

[解説]

実施機関は、毎年、本法・条例による個人情報保護の状況を国会・議会に報告し、かつ一般に公表することとしました。これにより、運用の実態が知らされ、議会や広く人々の監視が可能となります。この点から拒否処分がなされた事案とその理由の報告が極めて重要になります。したがって報告及び公表はこの要請を満たす程度に詳細である必要があります。

1条-6条  7条-11条  12条ー24条  

11条  12条ー24条