(刑の執行猶予)
第19条 保護命令違反又は緊急保護命令違反の罪で刑の言渡しを受けた者、またはドメスティック・バイオレンスを行ったことが刑法上の罪に該当するとして刑の言渡しを受けた者が、その刑の執行を猶予される場合には、執行猶予中次の条件を付して保護観察に付することができる。
一 被害者並びにその指定する親族及び同居人に対して、ドメスティック・バイオレンスを行うこと及びドメスティック・バイオレンスを行うことを告げて威迫する行為の禁止

二 直接間接を問わず、被害者に対して、面会・電話その他の方法で接触しまたは連絡をとる行為の禁止

三 被害者並びにその指定する親族及び同居人の住居、就業場所、就学場所、その他被害者の指定する場所への立入り及びかかる場所から一定距離への接近禁止

四 裁判所の定する銃器その他の危険物の所持の禁止・引渡

五 アルコール又は薬物の所持禁止

六 裁判所の指定する加害者のための更正プログラムまたはカウンセリングへの参加。但しこれらの費用は加害者が負担する。

七 被害者への損害賠償

八 その他、被害者及びその親族及び同居人の保護のために必要な措置

2 前項の場合、裁判所は加害者が刑の執行猶予を受けたこと及び刑の執行猶予の条件について、判決言い渡しと同時に被害者に通知しなければならない。

3 保護観察に付された者が、第1項の条件に違反した場合には、執行猶予の言渡しを取消すものとする。
1. 執行猶予の条件、及びその内容
(1) 刑の執行を猶予することができるのは、初犯であり、刑法25条の条件を満たす者でなければならない。

(2) 執行猶予を言い渡す際に付すことができるとして掲げた条件は、執行猶予中に加害者により再び被害者の心身及び生活に重大な危害を加えられること、さらに、被害者が加害者からの報復や再び危害を受けることへの恐怖等を取り除くことを目的としている。

(3) 条件のうち一・二・三・四号に関しては、第10条一・二・四・五号と同様に有形的暴力の防止及びその危険の除去のみならず精神的・心理的暴力、ストーカー行為等の防止を含む。五号のアルコール・薬物の所持禁止は、アルコール飲用時や薬物使用時にドメスティック・バイオレンスが行われやすいことに鑑み、その再発防止のためにこのような規定を設けた。六号で加害者のための更正プログラム・カウンセリングへの参加を命ずるにあたって裁判所は、加害者の参加意思、ドメスティック・バイオレンスを再び振るわないこと、カウンセリング・プログラムの課題の確実な遂行とその費用を支払う意思を確認した上で行わなければならない。いかなるプログラムを選ぶかは、保護観察または精神科医等のアドヴァイスを受ける。七号で裁判所は被害者への損害を賠償を命じることができる。これらの内容は、あくまで例示列挙であり、裁判所は八号により、被害者及び同居人の生命身体の安全・保護のために必要と認められるその他の条件を付すこともできる。

(4) 保護観察に関しては、執行猶予者保護観察法を準用する。なお、保護観察にあたって加害者を直接に指導監督する保護観察官、保護司等は、第4条6項に定める「被害者・加害者に関わる者」に含まれる。

2. 被害者への通知
裁判所は、被害者に対し加害者が執行猶予を受けたこと及び刑の執行猶予の条件を通知することを義務付けた。それは、執行猶予によってもたらされる被害者への精神的負担を軽減し、被害者の安全を配慮し事前の対処等を可能にするためである。

3. 執行猶予の取り消し
保護観察に付された者が第一項の条件に違反したときは、執行猶予を取消すものとする。
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