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第7 開示請求に対する決定

解説

知る権利にもとづく情報開示請求権を実現するためには、迅速で適正な開示決定の手続が確保されなければなりません。

まず、行政機関は、公開の請求がなされた場合には、できる限り速やかに開示か非開示の決定を行うことが義務づけられています。ただし、「相当な理由」があるときは請求した日の翌日から14日以内に決定を行えばよく(第1項)、さらに「やむを得ない理由」があるときは、請求した日の翌日から60日まで、決定の期限を延ばすことができます(第2項)。後者の場合には、請求者に延長理由が通知されなければなりません(同)。前者で決定期限を2週間としたのは多くの自治体の条例の例にならったものです。期間延長の「やむを得ない理由」とは、たとえば請求された情報が膨大であったり、複雑であったりするため、2週間では処理しえないような事情などです。

開示・非開示の決定に際しては、行政機関は一連の措置をとることが義務づけられています。まず開示・非開示の決定について、行政機関は遅滞なくかつ書面で決定を請求者に通知しなければなりません(第3項)。次に、特に非開示の決定については、非開示の具体的理由の付記。非開示の理由がなくなる期日や条件を示すことができるときには、その期日・条件の明示(第4項)。請求を受けた当該行政機関は保有・管理していないので非開示決定をせざるをえませんが、他の行政機関が保有・管理しているという場合のその旨の教示(第5項)。不服申立ができる旨の非開示決定を受けた者への教示(第6項)。なお所定の期間内に行政機関が開示・非開示の決定を行わない場合には、非開示決定がなされたものとみなされます(第7項)。

第8 事前聴取

行政機関は、第7の第1項の開示決定をする場合において、当該決定に係る行政情報に行政機関以外のものに関する情報が記載されているときは、あらかじめこれらのものの意見を聴くことができること。

解説

これは、具体的には開示請求がなされた行政情報に個人や法人などに関する情報が含まれている場合に、行政機関が開示、非開示の決定をする前に、こうした関係する個人や企業から開示についての意見を聴取しうるとする制度です。不当な情報開示へのこうした第三者の懸念に対する一方策としてこの制度はそれなりの存在根拠をもち、現に多くの自治体の条例でも規定され、運用されてきました。ただ、適用除外事項の規定に加えてこうした意見陳述の機会まで提供することにより企業等の第三者の利益が過度に保護される危険があるのも確かですから、第三者の権利として行政機関に聴取を義務づけるのではなく、行政の自律的で柔軟な運用をめざすために、本規定のような任意的な形での制度化を図ることなどの工夫が求められます。

第9 開示の方法

解説

第1項は開示のやり方について定めています。開示の方法について、各地の条例で採用されてきた、閲覧・謄写・視聴の他、採録物の再録物(テープをダビングしたものなど)の交付(3)や電磁的又は光学的記録についてフロッピーディスクや光ディスクに再録して交付することとしました(4)。また、第2第1項の「政令で定める採録物」については、その性質に応じて政令で開示方法を定めることとしました(5)。さらに、特定の情報について特定の開示方法に限定するのではなく、できるだけ請求者の希望に応じた開示方法をとることを義務付けました。例えば、文書になっているものでも、同じものがフロッピーディスクに入っている場合、フロッピーディスクに再録して交付を受けることを求めることができることとしました(第1項本文但書き)。

この規定は、アメリカの電子情報自由改善法案に、「実施機関は、何人の請求においても指定する形式やフォーマットで記録を提供できるよう合理的な努力をしなければならない」との規定が盛り込まれていることを参考にしたものです。

解説

第2項では、閲覧・視聴は無料とすることを定めました。地方自治体の情報公開制度で、閲覧・視聴自体を有料とするところがありますが、情報公開制度が知る権利に由来するものであることからすれば、無料とすべきであり、実際上も多額の閲覧手数料が制度活用を阻害している例が少なくありません。コピー代等の実費負担はやむを得ないでしょうが、一般の有料コピーサービスを大きく上回る額にすべきではありません。また、実費についても、営利的利用でない場合には減免しなければならないものとしました。

第10 行政情報検索ファイル

解説

まず、どこにどのような情報があるかがわからなければ、適切な開示請求はできませんから、行政情報を検索するためのシステムを作ることは情報公開制度を利用するうえで重要なことです。そこで、各行政機関は、行政情報検索ファイルを作成し、一般の閲覧に供することとしました(第1項)。また、この行政情報検索ファイルは磁気ディスク等で調製することとしました(第2項)が、これは従来地方自治体の情報公開窓口におかれていた「公文書目録」的なものでは検索のためには不便であり、コンピュータなどを活用した検索が必要になると思われるからです。検索ファイルをコンピュータに入れることによって、自分のパソコンで文書検索をすることも可能になります。

すべての行政情報について、行政情報検索ファイルに遅滞なく記録することを義務付けています(第3項)。非開示とすべき情報であっても、検索ファイルへの記載を免除し、情報の存在自体を隠すことは許されません。

第11 開示請求をする者の利便に資するための機関

開示請求をする者の利便に資するため、総務庁に、各行政機関における行政情報検索ファイルの閲覧に関する事務、開示請求についての相談その他の行政情報の開示に関する事務を分掌するための機関を置くこと。

解説

行政情報検索ファイルを整備したとしても、それだけで容易に開示請求ができるものではありません。情報の所在(複数の官庁にまたがる問題もあるでしょう)や開示請求手続について、具体的に相談にのってもらえる場が必要です。また、無理解な行政機関に対して情報公開制度の趣旨を説明、説得することが必要になる場合もあります。こうした役割をになう機関を総務庁におくことにしました。もとより1か所だけではなく、主要都市には出先の機関をおく必要があります。

第12 行政情報の開示状況の公表

解説

各行政機関の長に、開示の状況について、国会への報告と国民への公表を義務付けました(第1項)。また、総務庁長官の各行政機関に対する資料提出と説明を求める権限を規定しました(第2項)。これによって運用の監視と改善がはかられることと期待しています。

第13 不服申立て

解説

行政情報の公開を実効あらしめるためには、公開請求を受けた実施機関が不当に開示を拒んだときに、公平かつ迅速な救済がなされる必要があります。そのため、実施機関の非開示決定を行政処分と位置づけ、この法律によって設置される行政情報公開審査会に対し審査請求ができるものとします。審査請求のできる期間は、行政不服審査法に基づく不服申立の期間と同様、非開示決定の処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内とするのが妥当と考えます。

また、このような不服申立制度を実効的に機能させるためには、その制度そのものが国民によく知られていなければなりません。したがって、実施機関が公開請求に対する諾否の決定の通知を行う場合に、不服申立制度の存在、申立期間について教示すべき義務を実施機関に課すことが必要と考えます。

解説

審査会は、その職務の性質上、独立して職務を行うことが必要と考えます。すなわち、この審査会は、行政機関ではありますが、実施機関が行った非開示決定に対する審査請求を審理し、当該非開示決定が妥当であったか否かを裁決するという準司法的な役割を果たす機関であり、公平性の観点から行政機関から一定の独立性をもつことが要請されます。そのため、司法機関に準ずるような独立性が確保される必要があります。

解説

審査請求の事件を取扱わせるため、内閣総理大臣の下に審査会を置くこととします。しかし、公平性・中立性を確保するため、たとえば次のような仕組みが考えられます。審査会は、両院の同意を得て内閣総理大臣によって任命される5ないし7名の委員で構成される合議制機関とし、委員は、情報公開の意義、目的について深い識見をもち、公正な判断力をもつ者のなかから選任される、委員の任期は2年とし、その職務の性質上、守秘義務を負うものと考えます。

解説

審査会での審理が公平・公正に行われるためには、審査請求人および実施機関双方の充分な主張と立証に基づいて審理が進められる必要があり、そのためには書面審理ではなく口頭審理を原則とし、審理は公開で行われる必要があると考えます。また、審査請求人の申立がある場合には、口頭による意見陳述または文書等の提出による立証の機会が保障される必要があります。

解説

審査会は、非開示決定に対する審査請求の審理において、実施機関が非開示情報に該当すると判断した、その根拠条項と理由を、当該情報の内容に即して個別具体的に立証させる必要があります。そのためには、その理由の説明を求めまたはその理由を具体的に記録した文書の提出を実施機関に命ずることができる権限を与えられる必要があります。

解説

審査会は、審理のため必要があると認めた場合には、審査請求人・参加人・代理人・補佐人を退席させたうえで、公開を求められている当該行政情報の提出を求め、非公開の手続で非開示情報に該当するか否かの調査ができるものとします。このような手続きにより、非開示情報に該当するという実施機関の決定の正当性をより的確に判断できるものと考えます。また、このような非公開手続が行われる場合には、審査会は、それが必要な理由を審査請求人らに明らかにすることが要請されます。

第14 訴 訟

解説

ここでは、非開示決定処分の取消を求める訴訟について定めました。

非公開決定に対しては誰でも裁判所に訴訟を提起することができます。不服申立と訴訟提起はいずれでもまた両方ともすることができますし、その時間的前後も問いません。誰でも情報の公開を求める権利があり、非公開決定はその権利に対する拒否の処分ですから、非開示決定処分取消訴訟を提起することができると考えるべきです。したがって第14の1は当然のことを表した注意規定と理解することもできますが、ここでは、特に迅速な裁判が実現するように90日以内に判決しなければならないという努力義務規定をおきました。

解説

情報非開示処分取消訴訟では、当該文書がそのまま公開の法廷に証拠として提出されることはありません。証拠として提出されると訴訟自体が成り立たないからです。そのため、訴訟では、周辺資料に基づいて当該文書の非開示事由該当性を「推認」するという間接的審査方法が採用されます。しかし、この方法では、原告(請求者)側には、文書の内容が不明であり、反論反証がしにくいという難点があります。これを補うために、これまでの情報公開訴訟においては、裁判官が積極的に公開対象文書の特定のために実施機関側に釈明を求める手続がとられています。実施機関の釈明によって特定された内容は、判決書では「争いのない事実」として整理されるのです。

しかし、実施機関は、裁判官の求釈明に対しても個別具体的に釈明しない傾向にあります。そのため、やはり公開請求者側(原告)による反論、反証が大変に難しいのです。また、公知の事実、公開実例から適用除外事項に該当しないことと推認する方法は大変に時間がかかります(たとえば、安威川ダム訴訟は最高裁判決まで10年、那覇市情報公開差止訴訟は第1審判決まで6年、農薬健康茶訴訟は第1審判決まで3年)。

そこで、本モデル大綱では、アメリカ情報自由法における判例が形成したヴォーン・インデックス類似手続(当該行政情報の様式、記載項目、記載内容及び非開示の具体的理由を記載した文書の提出を命じる手続)を採用することとしました。第2項は、対象情報自体の公開法廷での取調べを嫌う行政機関側に対して課したヴォーン・インデックス類似の手続です。第3項では、それでも情報の内容が特定できないときのために、憲法82条の公開裁判原則のもとでの対象情報の特定を企図し、法廷内で、裁判官に対して情報を提示させるものです。

いずれにせよ、不服審査手続と同様、非開示決定の理由付記を個々の文書、情報の内容に即して個別具体的にすることを求め、これがなされなければ理由付記の不備、適用除外事項該当性の個別具体的な立証が尽くされないという訴訟手続にすべきです。

なお、福岡県情報公開審査会平成4年3月27日答申は、対象公文書の内訳を詳細にし、それぞれに応じて非開示理由を述べていますが、実施機関の非開示処分の理由付記、又は不服申立の反論段階で対象情報の内容に即し、個別具体的に非開示理由が明示されることによって、ヴォーン・インデックス類似手続と同種の機能が果たされるのではないかと考えます。

第15 行政情報公開審議会

解説

情報公開制度の運用状況をチェックし、制度自体や運用のあり方の改善を検討するための機関を、審査会とは別に設ける必要があります。そのための機関として総務庁に行政情報公開審議会を設けます(第1項)。国民各層からの多彩な委員で構成することが予定されています。

また、総務庁長官に、情報公開に関して、内閣総理大臣や行政機関の長に意見を述べる権限を規定しました(第2項)。これは行政情報公開審議会の見解を実現するための手段としての意味をもっています。

第16 行政情報の公開の総合的な推進

行政機関は、行政情報の公開を総合的に推進するため、行政情報を開示するほか、行政に関する正確で分かりやすい情報を国民が迅速かつ容易に得られるよう、個人情報保護制度、資産公開制度、会議公開制度、閲覧・縦覧制度、情報提供施策及び情報公表制度の拡充、並びに行政情報の計画的なデーターベース化等行政情報の総合的な利用のための方策の推進に努めなければならないこと。

解説

行政機関に、情報公開に関連する諸制度の拡充も含め、行政情報の公開の総合的な推進をすべき努力義務を規定しました。

第17 地方公共団体及び特殊法人等の保有する情報の公開

地方公共団体及びこの法律の定める行政機関に該当しない特殊法人及び政府関係法人は、この法律に基づく国の施策に留意しつつ、その保有する情報の公開に関し必要な措置を講ずるよう努めなければならないこと。

解説

地方公共団体及び特殊法人等についても、国の施策に留意しつつ、情報の公開をすすめるべき努力義務を規定しました。

地方公共団体については、国と同様の情報公開制度の実施を義務づけることも考えられますが、制度化の遅れている地方公共団体もありますが、地方公共団体における情報公開制度の実現が国の制度化に先行してきた経過からすれば、地方公共団体の自主性を尊重するべきでしょう。


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