JCLU行政情報公開法モデル大綱


1996年6月

第1 目的

 この法律は、行政情報の開示を請求する権利を明らかにすることにより、日本国憲法の理念に基づき知る権利を保障し、行政への参加と監視及び行政運営の透明性の確保を目的とすること。

解説

 情報公開法の目的を掲げたものです。  日本国憲法の国民主権、表現の自由などの規定を根拠に、市民には知る権利が保障されています。しかし、そのことが行政情報の開示を請求する権利(以下、「開示請求権」)を保障し、それをただちに実現するわけではありません。そのため情報公開法を制定し開示請求権を明らかにするとともに、それを保障するための具体的な手続きを定めたのです。こうした手続きが確立されることで、日本国憲法における知る権利の保障はより実効的なものになっていくでしょう。

 すでに制定、施行されている情報公開条例の運用が物語っているように、開示請求権を明らかにし、知る権利を保障していくことで、行政のあり方は確実に変わっていきます。たとえば、政策に関する情報の公開は参加のための素材を提供し、税金の使いみちに関する情報の公開は「官官接待」に象徴されるように行政のあり方を監視し、変えていくための原動力となりました。そのようにして、情報公開法の制定は国政レベルでも行政に対する参加と監視を可能にし、行政運営の透明性を確保していくものとなるでしょう。

第2 定義

この法律における用語の意義は、次に定めるところによるものとすること。

解説
 この法律で開示請求権の対象となる行政情報の定義を定めたものです。

 情報というものは何らかの媒体に記録されることで保存や提供が容易になりますが、自治体の情報公開条例の多くはこの記録媒体の面から行政情報の範囲を限定し、文書図画などの紙媒体に記録されている情報に限定しています。しかし、最近は行政機関の現場でもコンピュータがさかんに利用されるようになり、紙以外の媒体に記録される情報が増えています。そこで、モデル大綱では「文書図画、マイクロフィルム、撮影フィルム、スライド、録音テープ、録画テープ、電磁的又は光学的記録」とし、コンピュータに記録されている情報も含めてすべての記録媒体を行政情報として定義し、開示請求権の対象とすることにしました。なお、「その他制令で定める採録物」というのは、情報公開法制定の時点では存在しなかった記録媒体が使用されるようになった場合を想定したものです。

 また、自治体の情報公開条例の多くは、決裁・供覧等の行政機関内部の事案決定手続きを終了したものに限って行政情報としています。そのため、こうした手続きを経ない文書が対象外となり、開示請求しても「不存在」とされる運用が目立ってきています。たとえば、一部の自治体では公立学校の職員会議録が決裁を経ない文書であることを理由に「不存在」とされました。行政機関が現に作成、取得しているにもかかわらず、開示請求の対象外とされるような不合理を避けるために、モデル大綱では「行政機関が保有または管理しているもの」と定め、事案決定手続きの面からの限定は加えないことにしました。

解説

開示請求権の対象となる行政情報を保管している機関で、第4でいう行政情報を開示する義務を負う機関の定義を定めたものです。

イの「内閣、法律の規定に基づき内閣に置かれる機関」とは人事院を、「国家行政組織法第3条第2項に規定する国の行政機関として置かれる機関」とは府、省、委員会及び庁を、「内閣の所轄の下に置かれる機関」とは内閣官房、内閣法制局及び安全保障会議をそれぞれさします。

ロの「国家行政組織法第8条の3の特別の機関のうち政令で定めるもの」とは、警察庁、検察庁、中央防災会議をはじめとする29の機関をさします。

ハは「会計検査院」ですが、「内閣に対し独立の地位を有する」(会計検査院法第1条)ことから会検査院が自主的に判断することが適当であり、法律の対象外と考える意見もあるようです。しかし、そうした会計検査院であっても行政機関としての性格を持ち、職員はすべて国家公務員であって、ここだけを行政機関ではないとする積極的な根拠はありません。とりわけ、その保有する情報は情報公開法の目的である「行政に対する監視」に不可欠なものが多いことから、行政機関に加えました。

ニは「特殊法人」ですが、これは会計検査院とは異なり特殊法人の職員は公務員ではありません。しかし、その事務事業は公的資金によってまかなわれており、特殊法人によっては市民の権利義務に影響を与えるさまざまな権限が認められています。このように特殊法人についても、一般の行政機関ときわめて類似した性格と実態が認められます。ちなみに、高速増殖炉もんじゅの事故では特殊法人である動力炉燃料事業団の情報隠しが問題となりましたが、こうした体質を改めていくためにも特殊法人を情報公開法の対象としていくことが大切です。

解説

行政情報の定義のところで使用した「電磁的又は光学的記録」という言葉を、さらに詳しく再定義したものです。なお、「専ら文書図画の内容を検索する目的で作成されたものを除く」としたのは、図書データベースに象徴されるようなこうした情報は、いわゆる二次的かつ加工された情報の集合体であり、文書図画の内容自体の開示を定める情報公開法の趣旨とは異なるし、内容自体が開示されることでこうした情報を対象外とする問題点は生じないからです。

第3 行政機関の責務等

解説

情報公開法の解釈、運用にあたる行政機関の責務を定めたものです。

1では開示請求権が「適正に保障されるよう努めなければならない」と定めました。自治体の情報公開条例の運用でときおり見かけますが、実際には開示できるはずの情報を安易に非公開にしたり、非開示だからやっても無駄だとして開示請求を控えさせるなどの解釈、運用は、ここでいう責務に明らかに反するものといえるでしょう。

2では「所掌事務の処理にあたっては、処理内容等を正確に記録するとともに、保有している情報を利用しやすいように整備、保管し、閲覧に供するよう努めなければならない」ことを定め、行政機関に対して適正な情報管理を求めました。そもそも情報公開法はその対象となる行政情報が適正に作成、取得、管理されていてはじめて、その機能を発揮するのです。ところが、最近、自治体の情報公開条例の運用の中で開示請求した行政情報の「不存在」が頻発しています。それはそもそも行政情報を記録していなかったり、作成、取得した情報を廃棄したりするという形で現れています。こうした「不存在」をできるかぎり少なくさせていくためには、この規定が不可欠です。なお、審議会など行政機関が設置した附属機関の会議記録については開示を求める国内外のニーズが高いことから、これを名指しして適正な情報管理を求めました。

第4 行政情報の開示を請求する権利

何人も、行政機関の長に対し、行政情報の開示を請求する権利を有すること。行政機関の長は、開示請求があったときは、第5の場合を除き、開示請求者に対し、当該開示請求に係る行政情報を開示する義務を負うこと。

解説

開示請求権をもつ者の範囲を定めたものです。

モデル大綱では「何人も、行政機関の長に対し、行政情報の開示を請求する権利を有する」と定め、開示を求める人の国籍などを問わずに誰でも開示請求をすることができるとしました。自治体の情報公開条例の中にはこのように「何人」にも開示請求権を認めているものは多くありませんが、川崎市、町田市のように「何人」にも認めている自治体ではそうすることで条例の運用上問題を生じたようなことはまったくありません。そればかりか、国際化という時代の流れを考えるならば、相互理解を深めていく上でも日本の行政情報を積極的に国外に提供していく必要があるといえます。

他方、開示請求者に対して行政機関の長が「当該開示請求にかかわる行政情報を開示する義務を負う」とし、権利義務関係を明確にしました。

第5 開示義務を免除される行政情報

解説

1 第5の1の(1)から(9)までは、この法律によって行政機関に課せられる開示義務が特別に免除される情報の類型を示すものです。前文にも掲げられているとおり、民主政治のもとでは、行政機関が保有するすべての情報は国民の共有財産ともいうべきものであり、すべての情報の開示が原則となりますが、情報の内容によっては国民の権利保護のために非開示とせざるを得ないものがあることも事実です。したがって、行政情報に対する国民の知る権利は、開示しないことによってまもられる国民の権利・利益との調和のうえに実現される必要があります。「開示義務を免除される行政情報」の定めは、開示義務を免除される情報の内容を必要最小限の範囲で、可能なかぎり限定的にかつ明確に定めることによって、国民の「知る権利」を最大限に実現する方向でその両者の調整を図ろうとするものです。

ここで、開示義務を免除される情報に該当する場合には当該情報を「開示しないことができる」としていることの意味は、それに該当すると判断された情報の開示の禁止を行政機関に命じるという意味ではなく、この法律によって課せられる開示義務が免除され、行政機関が開示を強制されないということを意味するにとどまります。「開示しないことができる」という規定の趣旨は、請求された情報の内容がここに規定された情報に該当する場合であっても、なおその開示が求められる具体的事情やそれを開示することによって得られる公益の重大性等を考慮して、行政機関が国民の「知る権利」を最大限に実現するためにそれを開示することができる余地を残そうとするものです。

その点で、「開示義務を免除される行政情報」の定めは、国家公務員法等における守秘義務規定における「秘密」情報とは、その趣旨、目的を異にするものです。したがって、上記のような場合に、行政機関がこの法律にしたがって情報を開示する措置をとったとしても、それだけで守秘義務違反として担当公務員が処罰の対象とされることになるわけではありません。

また、ここに掲げられた情報のいずれかに該当するかしないかの第一次的な判断は、行政機関の長に委ねられていますが、行政機関の長は、その判断を行うにあたっては当該情報の内容自体に即して判断すべきことはいうまでもありません。当該情報を別の何らかの理由で「開示したくない」とか、誰が開示請求をしているかとか、開示した場合にどのような影響が生ずるか等々の問題は、この判断に際しては考慮すべき要素ではありません。非開示決定がなされたあと、不服申立てや処分の取消を求める訴訟が提起された場合には、当該情報が「開示義務を免除される行政情報」のどれに、なぜ該当するかについての立証責任は、当然、当該行政機関の長が負うことになります。

文書の存在・不存在を明らかにしない応答拒否処分(「あるかないか答えない処分」)は濫用の危険があるために採用しませんでした。

解説

個人のプライバシーの保護は、情報公開制度のもとにおいても最大限になされなければなりません。しかし、プライバシーの保護に名を借りて個人識別情報の過度な非公開を禁ずるべきことは「前文3」の指摘するところでもあります。問題は、本文で「個人識別情報」をどう規定するか、個人識別情報であっても例外的に但書きで開示する場合をどう定めていくかにあります。本大綱は、「個人識別情報」について、いわゆるプライバシー情報型を斥けて、個人識別可能情報型をとっています。そのうえで「当該個人の私生活に関する情報」をさらに限定し特定化し、特別の個人識別情報・個人識別可能情報のうち、個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得その他個人に関するものを開示しないでおくことができるとすべきである、とします。他方、本大綱は個人情報の過度な非公開を禁ずるために絶対的開示を広く設定しています。なかでも、公的人物のプライバシーに関して(ホ)、(ヘ)の例外的開示をおいた点に特徴があります。

解説

政府機能の肥大化に伴い、国には企業活動に関する情報を中心とした法人情報が大量に蓄積されてきています。企業活動が国民一人一人の生活に大きな影響を与えていることを鑑みると、こうした情報が開示されるべきであることはいうまでもありません。この場合、企業活動も財産権・営業の自由等の憲法上の保護をうけることから、国民の知る権利とのバランスが注目されます。問題は、非開示とされるべき法人情報の定義を定める本文、公益的観点から例外的に開示しなければならない事項を定める但書きにあります。この場合、企業に不利益を与える情報を一律に適用除外にしてしまうと過度に非開示の範囲が広がるので、なにも個人識別情報の場合のように原則非公開とはされていない法人情報にあっては、個人識別情報にましてその範囲を限定し、明確にしなければなりません。そこで、「…開示することにより当該法人等又は当該個人の競争上の地位又は事業運営上の地位その他の正当な利益を著しく害することが明らかであるもの」を非開示事項とします。これに対して個人の生命、身体、健康、財産、環境などに影響を及ぼす法人情報等があり、これは、事業活動によって人の生命、身体、健康又は環境に危害を生じ、又は生ずるおそれがある情報、違法又は著しく不当な事業活動によって人の財産又は生活に侵害を生じ、又は生ずるおそれがある情報、 、 に掲げる情報に準ずる情報であって、開示することが公益上必要であると認められる情報の3点を、絶対的開示事項とします。事前聴取制については「第8 事前聴取」をご参照ください。

解説

国の防衛に関する情報は、秘密保持が最も強調され、国民に対して秘匿される扱いが伝統的になされてきたものです。しかし、防衛情報についての過度の秘密主義が民主政治に深刻な影響を与えるものであること、その情報が国民の権利や義務に重大な影響を有するものであることを考えると、防衛に関する情報は、国民に公開されて不断の監視と統制のもとにおかれる必要があり、その意味で防衛情報も「聖域」であってはならず、原則公開の原理に服することが認められなければならないものです。

そこで、「国の防衛に関する情報であって、開示することにより国の防衛に重大な支障を生ずることが明らかであるもの」だけを開示しないことができる情報として扱うこととしました。これは、情報の開示義務を免除しなければならない重大にして明白な実質的理由がある場合にのみ、行政機関はその義務を免除されるという趣旨のものです。「国の防衛」とは、軍事的な直接および間接の侵略から国土、国民の生命、身体、財産を守ることをいい、政治経済秩序の維持などの利益までは含まないと考えます。「国の安全」や「国の利益」あるいは「国益」というような言葉をあえて用いなかった理由は、その点にあります。また、「重大な支障を生ずることが明らか」とは、単なる「支障」や単なる「おそれ」だけでは充分ではないことを示しています。したがって、情報が開示されることによって、国土、国民の生命、身体、財産に対する重大な危険が惹起され、その蓋然性が高いことが実質理由をもって立証される場合にだけ、情報の非公開扱いが認められることになります。

なお、防衛情報は、外交情報その他の行政情報一般とは、その内容・性格を異にするものであり、開示義務の免除が不当に拡大されるのを防ぐ意味から、他の情報とは別に規定することとしました。

解説

外交に関する情報も、国民の権利と義務に重大な関わりを有するものであることから、その情報も国民の監視と統制のもとにおかれる必要があり、原則公開の原理に服するべきものであることは明らかです。しかし、外交は相手国や国際機関の存在を前提とし、もし不用意に外交情報を開示して相手の利益を損ない、その信頼を失うことがあれば、結果的に国と国民の利益が充分に達せられないことが考えられます。そこで、その両方の利益を調整するために、「外交関係に関する情報であって、開示することにより、日本国と他国若しくは国際機関との信頼関係を著しく損なうことが明らかであり、又は外交交渉上国の重大な利益を害することが明らかであるもの」を、開示義務を免除される情報と規定しました。

ここでは、外交交渉に関する情報を、現に外交交渉の過程にある案件に関する情報に限定していません。それは、現に外交交渉の途上にある情報以外にも、外交に関する情報で開示義務を免除すべき情報があり得ると考えられるからです。しかし、それらの情報といえども、原則公開の原理をふまえれば必要最小限度の範囲にとどめられなければならないことは明らかです。そのために、「信頼関係を著しく損なうことが明らかであり、又は外交交渉上国の重大な利益を害することが明らかであるもの」と規定しました。その趣旨は、信頼関係や国の利益が拡大解釈されて、開示義務の免除される範囲が不当に拡大されることがないようにしようとするものです。したがって、防衛情報について述べたのと同様に、単なる「損害」や単なる「おそれ」では開示義務を免除される充分な理由とはならないことを意味しています。

また、外交情報については、防衛情報と同じ適用除外規定に含ませる例が多いが、両者は、その趣旨や内容や範囲が同じものではなく、その開示義務を免除する理由や程度も異なるものですから、両者の開示義務の免除を限定するためにも、防衛情報とは別に規定するほうが望ましいと考えます。

解説

犯罪の捜査や予防など、いわゆる「法と秩序」の維持にかかわる国家の活動が市民の生命・身体・財産を守るうえで不可欠なものであることは言うまでもありませんが、同時にこうした活動は逮捕など絶大な強制権限や広範な監視活動等による市民の自由や人権への一定の制約をもたらすものでもあり、そうした公権力の行使への民主的なコントロールの一環として情報公開の必要性も高いことも疑いえません。しかし、事柄の性格上こうした活動の実効的な遂行のために、また市民のプライバシーにかかわる情報も少なからず含むために、一定の秘密保持の必要性も否定できません。したがって、その適正な遂行を著しく阻害することが明白な場合という厳しい要件を課したうえで、開示義務を免除することにしました。ただし、保護の対象は、犯罪の捜査・予防および市民の「生命・身体・財産の保護」に関する情報とし、あいまい漠然とした「公安」や「公共の安全・秩序維持」に関する情報などと規定するのを避け、非公開の不当な拡大への歯止めを図りました。

解説

本項は、以下の(7)、(8)とあわせ、いわゆる「行政の運営・執行に関する情報」を適用除外事由として定めるものです。行政の運営や執行に関する情報は、本来まさしく情報公開の何よりの対象であるはずのものですが、事柄の性質上公開になじまない場合があることも否定できません。しかしながら、原則公開の見地からいえば、恣意的な非開示の濫用や秘密の拡大を防ぐことが肝要で、ここから本大綱では規定のあり方につき次のような配慮を加えました。

開示・非開示につき行政機関の裁量の余地を広げないよう可能な限り概括的・一般的な規定の仕方は避け、一定の類型化・特定化を目指す必要がありますので、ここから狭義の行政執行情報(6)、意思形成過程情報(7)、いわゆる協力関係情報(8)という類型化規定方式を採用しました。なお、東京都の条例のように議決などにより審議会など合議制機関を包括的に非公開とする類型を設けている場合もありますが、情報の個別具体的内容を問わず一括・一律に広範な情報を非公開にするのは情報公開の理念に真っ向から反し、妥当でないと考え、認めませんでした。

除外項目の具体的内容については、真に開示を免除するに足る合理性が認められるか否か、吟味精選しました。

開示の免除が認められる場合を開示すると「著しく阻害することが明らかである」とするなど、厳格な絞りをかけました。

本項で規定する狭義の行政執行情報については、多くの条例でも規定され、ほぼ異論のありえない事由を具体的に列挙するとともに、すべての事由を規定し尽くすことは困難ですので、それと同種・同類のその他の事業についても認めうる規定も設けました。

解説

適正な行政手続という観点から考えますと、行政機関による意思決定そのものだけでなく、意思形成のプロセス自体についても可能なかぎりその情報は公開されるべきだということになります。しかしながら、機関内部や他の機関との間で自由な意思決定が確保され、無責任な批判や圧力が関係者に加えられたり、その結果適正な意思形成が不当に歪められたりしないことも必要です。この規定は、そうした弊害をもたらすような情報を公開から保護しようとするものですが、こうした理由からすれば、弊害の危険があるのは意見に関する情報に限られ、事実に関する情報にはかかわらないので、後者は除外しました。また、非公開の過度の拡張や濫用を防止するため、非開示が許される場合を「当該」の意思決定への支障に限定し、「将来の同種の」意思決定への支障を理由にした非公開措置は認めないことにしました。

解説

行政機関以外の国の機関や地方公共団体からの依頼や協議にもとづいて作成したり、取得したりした情報を、そうした他機関の利益の観点から一定の場合保護することには合理的な根拠が認められます。そこで、地方自治体の条例の中には東京都のように公開すると国等との協力関係や信頼関係が損なわれる情報を適用除外事由とするものもみられます。しかしながら、こうした規定だと非常に主観的な判断によったり、他の機関の要請やそうすることを仕向けることによったりして、具体的な弊害の有無を問わず本来公開が求められる情報を広く非公開としてしまう危険がありますので、より客観的に他機関の事業・事務の「適正な遂行を著しく阻害することが明らかであるもの」としました。

解説

情報公開法は、すべての情報の原則公開を義務づける法律ですが、個々の法律には、特別の理由から特に秘密保護が定められている場合があります。そのような法律を、一般的公開を定める情報公開法に対する特別法として扱うことには妥当性があると考えます。「他の法律の規定により、当該情報が開示することができないと明示的に定められている情報」について開示義務が免除されると規定したのは、そのためです。

しかし、この場合、単に別の法律が守秘義務を課しているとか、逆に、開示を命じていない、というだけでは、開示義務を免除する充分な理由とならないことは明らかです。ある法律が実質的な理由があって特定の情報について特定の範囲で非開示を定めていると読み取れる場合にのみ、ここにいう「法律秘」と認めることができます。したがって、既存の法律のなかには、公務員に対して守秘義務を課す規定や非開示を命じる規定をもったものが少なくありませんが、そのすべてが、直ちに「法律秘」の根拠となるわけではありません。たとえば、国家公務員法の守秘義務規定のような一般的概括的規定は、上記のような明確な内容を含まないため、「他の法律の規定」には当たらないものと考えます。

各種公務員法にみられる守秘義務規定は、もともと公務員の服務規律を定めたもので、一定の情報を非開示にする趣旨とは限りません。したがって、個々の守秘義務規定の趣旨、目的、規定内容を具体的に検討し、守秘義務の対象となる情報が開示できない旨を明確に含んでいると解される場合にのみ、「他の法律の規定」に当たると解してよいと考えます。個々の法律の規定が、開示義務を免除する根拠となるかどうかは、それぞれの規定に即して個別に検討することが必要であり、また同時に、それら諸規定については情報公開の趣旨と理念に照らして全面的に見直しが必要と考えます。

また、この法律制定以後に新たに情報について非開示を定めることは、この法律の効力に影響を及ぼし、この法律の部分改正となるものですから、非開示を必要とする実質的理由を確認し、その内容と範囲を明確に規定しなければならないことはいうまでもありません。

解説

情報公開制度は情報を公開するための制度ですから、公開しないことはあくまで例外であって、非公開を主張する側が主張立証責任を負うことになります。非開示条項は、抽象的に規定されるため、ゆるやかな解釈運用がされるなら、情報公開制度は「非公開制度」と化してしまうので、非開示条項の解釈運用は、情報公開制度の存在意義がかかったいわば生命線であり、拡大解釈は許されず、文言に忠実に厳密に解釈運用されるべきです。

判例も、最高裁三小平成6年2月8日判決(判時1488号3頁)はこのことを具体的に述べ、大阪府水道部の懇談会費の公開請求の事案について、大阪府側において、当該懇談会がその内容により、企画調整事務または交渉事務等にあたり、事業の施行のために必要な事項についての関係者との内容の協議を目的として行われたものであり、かつ当該情報の記録内容自体あるいは新聞等の他の関連情報と照合することにより、懇談会の相手方等が了知される可能性があることを、主張立証する必要がある、としています。非開示条項への該当について、具体的に主張しなければ、主張責任を尽くしたことにならず、主張自体失当として棄却を免れませんし、そのうえで、主張を裏付ける具体的事実を立証しなければならないのです。

本項は、このことを情報公開法においても明らかにするため、明文化したものです。

解説

情報の一部について非公開理由に該当する情報があるからといって部分開示できる情報については、単に「可能なかぎり分離して」と規定しました。「合理的に分離できるときは」あるいは「容易に分離できるときは」といった限定を付することはのぞましくありません。これらはいずれも経費、時間等のコストを考慮したものですが、部分開示の範囲を不当に狭くするおそれがあるからです。このことは、行政情報は公開を原則として、正当な理由がある必要最小限の場合にのみ非公開とすることができるとする「前文2」の要請するところでもあります。

第6 開示請求の方法

行政情報の開示請求をしようとする者は、行政機関に対し、次の各号の事項を記載した請求書を提出しなければならないこと。

解説

情報の開示を請求するためには、行政機関に対し請求書を提出することが必要であり、そこには次の3つの事柄が記載されなければなりません。

その第一は、開示請求者の氏名、住所(法人・団体の場合は、名称、事務所、事業所の所在地、代表者の氏名)です(1)。第二は、開示を請求している行政情報の件名あるいは内容です(2)。件名や文書名という形で開示対象を厳密に特定することは普通の市民にとって必ずしも容易でなく、こうした厳しい要件のみを課すと公開制度の趣旨は著しく損なわれかねません。したがって、件名がわからなくとも、どのような内容の情報であるかを示せれば請求対象の特定は満たされます。第三は、請求者が希望する開示の方法です(3)。「第9」に定めているように、開示には、閲覧、複写の交付、視聴等、種々の方法があり、どれを選択するかについては請求者の意思が可能な限り満たされるべきですので、希望があればこれについての記載も認められるのです。

なお、開示請求の理由により公開の可否が判断されることはそもそも公開制度の理念に反し、またそうすると公開の可否につき行政機関の恣意が介在する危険もありますので、請求理由の記載は要求されていません。

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