刑事記録公開法要綱
(JCLU情報公開小委員会案)

1 要綱作成の意図

刑事記録の公開については既に「刑事確定訴訟記録法」(刑訴記録法)の定めるところであるが,刑訴記録法によって公開される記録は非公開理由や施行規則により極めて限定されている上に,簡易迅速な不服申立て制度がないなど,およそ開示請求権を認めたものとはいいがたく,恩恵的発想にひきずられている。われわれの意図するところは,国民主権の見地からする刑事記録の公開の実現である。国民が刑事司法作用を監視するための刑事記録の公開を実現するには,刑訴記録法の手直しでは到底間に合わない。

そこで,国民による刑事司法作用の監視という見地から,公開の対象とする記録に無用の限定を設けさせないこと,記録の保管に全きを期することなどを念頭に置いて本要綱を策定した。刑訴記録法に代えて,全く新たな要綱を提示するのであるが,他方,現実に早期制定可能な要綱にすることを心がけ,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)の規定で本要綱に用いることができるものについては,これに従うことにした。

2 記録閲覧・謄写の権利性の明定

1に述べたような見地から,国民の知る権利,国家機関の説明責任を明定した(第1)。知る権利の主体を「何人も」とする(第5)ことは,いうまでもない。

3 対象記録の範囲

公開の対象となる記録について,刑訴記録法は訴訟終結後の刑事被告事件(すなわち起訴された事件)にかかる訴訟記録に限定しているが,本要綱は不起訴処分前の記録や被告事件の訴訟終結前の記録を除き,裁判のほか,広く検察官・検察事務官や司法警察職員が行う処分,刑の執行の記録まで含ませている(第2二)。不起訴処分にかかる記録についても,原則として開示させることとしている(第7の2)

開示に適さない内容が含まれている記録についても,その部分を除くことができるときはそれを除き,可能な限りの開示をさせるよう図っている(第8)

4 記録の保管機関

記録の保管機関は,刑訴記録法と異なり,裁判所とした(第2三)。訴訟の一方当事者である検察官に保管を担当させるのでは,刑事記録の十分な公開について全きを期するのに疑問なしとしないからである。

また,記録公開の求めに十分応じるためには,その記録が確実に保管されていることが必要であることは,いうまでもない。本要綱は,刑訴記録法別表と同様の保管期間を定めるとともに,記録保管をより確実にするために,保管期間が経過した後に使用されなくなった記録については,原則として国立公文書館に移管することとした(第3 2)

5 開示請求権保障の充実化

開示請求権の主体を「何人も」とする以上,請求の手続きを平易にすることが望まれる。それが容易でないのであれば,請求手続きに不備があるときに即座に不受理とするのではなく,補正をさせた上で,できるだけ開示が実現されるよう努めるべきことになる。そこで,本要綱は,保管機関は,開示請求書に形式上の不備があるときは,参考となる情報を提供して補正を促し,不受理とすることを避けるようにした(第6 2)

そればかりでなく,開示請求を放置することを防ぐため,開示するか否かの決定を原則として開示請求の日から30日以内にしなければならないものとした(第12)

6 不服申立て,開示決定等にかかわる訴訟の管轄など

開示するか否かの決定に対する不服申立てについては,簡易迅速な救済を図るという趣旨から,情報公開法を準用し,情報公開審査会に諮問することにした。

開示決定等にかかわる訴訟も実効性のあるものにするため,管轄裁判所として,原告の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所も含ませている(第17)

7 不開示情報その他

その他,おおむね情報公開法の規定と同様である。

なお,不起訴処分以外の刑事記録の場合は,公開の求めと対立する拮抗利益は犯人の改善及び更生や関係人の名誉又は生活の平穏であるから,刑事記録の開示義務の除外事由については,情報公開法5条ではなく,刑訴記録法4条2項にを参考としている。ただし,不開示とするための要件を厳格にし,「被告事件が終結した後3年を経過したとき」(刑訴記録法4条2項2号)を開示義務の除外事由から外したほか,刑訴記録法4条2項の3〜5号に掲げられている事由についても,要綱では要件を厳格にし,単に「おそれがあると認められる」だけでは不開示とすることができないことにした(第7の1)

他方,不起訴処分にかかる刑事記録については,法廷で公開されないことによるプライバシーの保護をより一層図るために,原則として,情報公開法と同レベルの不開示情報とした(第7の2)

なお,本要綱は,情報公開小委員会案であるが,小委員会としては,これを公表して広く意見を募り,より豊かな提言をふまえて,自由人権協会案となることを求めている。

以上


法案の一覧 | ホームページ | 入会のご案内