第1章 総則
(目的)
第1 この法律は,国民主権の理念にのっとり,刑事記録の開示を請求する権利につき定めること等により刑事記録の一層の公開を図り,もって国民の知る権利を保障し,刑事事件における国の機関の諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに,国民の的確な理解と監視の下で刑事事件における裁判の公開を充実させて国民の司法参加の促進に資することを目的とする。
(定義)
第2 この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号の定めるところによる。
第2章 刑事記録の保管及び開示
(刑事記録の管理)
第4
- 1 保管機関は,この法律の適正かつ円滑な運用に資するため,保管文書を適正に管理するものとする。
- 2 保管機関は,政令で定めるところにより保管文書の管理に関する定めを設けるとともに,これを一般の閲覧に供しなければならない。
- 3 前項の政令においては,保管文書の分類,作成,保存及び第32の移管に関する基準その他の保管文書の管理に関する必要な事項について定めるものとする。
(開示請求権)
第5 何人も,この法律の定めるところにより,保管機関に対し,刑事記録の開示を請求することができる。
(刑事記録の開示義務)
第7の1 保管機関は、不起訴処分以外の刑事記録について開示請求があったときは、開示請求にかかる刑事記録に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該刑事記録を開示しなければならない。
- 一 刑事記録が弁論の公開を禁止した事件のものであるとき。
- 二 刑事記録を開示することが公の秩序または善良の風俗を害することとなるとき。
- 三 刑事記録を開示することが犯人の改善及び更生を著しく妨げることとなるとき。
- 四 刑事記録を開示することが関係人の名誉又は生活の平穏を著しく害することとなるとき。
第7の2 保管機関は,不起訴処分にかかる刑事記録について開示請求があったときは,開示請求に係る刑事記録に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該刑事記録を開示しなければならない。
- 一 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし,次に掲げる情報を除く。
- イ 法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報
- ロ 人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報
- ハ 当該個人が公務員(国家公務員法(昭和22年法律第120号)第2条第1項に規定する国家公務員及び地方公務員法(昭和25年法律第261号)第2条に規定する地方公務員をいう。)である場合において,当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは,当該情報のうち,当該公務員の職及び当該職務遂行の内容にかかる部分
- 二 法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって,次に掲げるもの。ただし,人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報を除く。
- イ 公にすることにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの
- ロ 行政機関の要請を受けて,公にしないとの条件で任意に提供されたものであって,法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質,当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの
- 三 公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあるもの
- 四 公にすることにより,犯罪の予防,鎮圧又は捜査,公訴の維持,刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるもの
- 五 国の機関及び地方公共団体の内部又は相互間における審議,検討又は協議に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの
- 六 国の機関又は地方公共団体の行う事務又は事業に関する情報であって,公にすることにより,次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
- イ 監査,検査,取締り又は試験に係る事務に関し,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし,若しくはその発見を困難にするおそれ
- ロ 契約,交渉又は争訟に係る事務に関し,国又は地方公共団体の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ
- ハ 調査研究に係る事務に関し,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ
- ニ 人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ
- ホ 国又は地方公共団体が経営する企業に係る事業に関し,その企業経営上の正当な利益を害するおそれ
(部分開示)
第8
- 1 保管機関は,開示請求に係る刑事記録の一部に開示しないものとする情報が記録されている場合において,その情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは,開示請求者に対し,当該部分を除いた部分につき開示しなければならない。
- 2 開示請求に係る刑事記録に前条の2第一号の情報(特定の個人を識別することができるものに限る。)が記録されている場合において,当該情報のうち,氏名,生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより,公にしても,個人の権利利益を害することがないと認められるときは,当該部分を除いた部分は,同号の情報に含まれないものとみなして,前項の規定を適用する。
(公益上の理由その他正当な理由による開示)
第9 保管機関は,開示請求に係る刑事記録に開示しないものとする情報が記録されている場合であっても,公益上の理由その他正当な理由があると認めるときは,開示請求者に対し,当該刑事記録を開示しなければならない。
(刑事記録の存否に関する情報)
第10 開示請求に対し,当該開示請求に係る刑事記録が存在しているか否かを答えるだけで,不開示情報を開示することとなるときは,保管機関は,当該刑事記録の存否を明らかにしないで,当該開示請求を拒否することができる。
(開示請求に対する措置)
第11
- 1 保管機関は,開示請求に係る刑事記録の全部又は一部を開示するときは,その旨の決定をし,開示請求者に対し,その旨及び開示の実施に関し規則で定める事項を書面により通知しなければならない。
- 2 保管機関は,開示請求に係る刑事記録の全部を開示しないとき(前条の規定により開示請求を拒否するとき及び開示請求に係る刑事記録を保有していないときを含む。)は,開示をしない旨の決定をし,開示請求者に対し,その旨を書面により通知しなければならない。
(開示決定等の期限)
第12
- 1 前条各項の決定(以下「開示決定等」という。)は,開示請求があった日から30日以内にしなければならない。ただし,第6第2項の規定により補正を求めた場合にあっては,当該補正に要した期間は,当該期間に参入しない。
- 2 前項の規定にかかわらず,保管機関は,事務処理上の困難その他正当な理由があるときは,同項に規定する期間を30日以内に限り延長することができる。この場合においては,保管機関は,開示請求者に対し,遅滞なく,延長後の期間及び延長の理由を書面により通知しなければならない。
(開示決定等の期限の特例)
第13 開示請求に係る刑事記録が著しく大量であるため,開示請求があった日から60日以内にそのすべてについて開示決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合には,前条の規定にかかわらず,保管機関は,開示請求に係る刑事記録のうちの相当の部分につき当該期間内に開示決定等をし,残りの刑事記録については相当の期間内に開示決定等をすれば足りる。この場合において,保管機関は,同条第1項に規定する期間内に,開示請求者に対し,次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
- 一 本条を適用する旨及びその理由
- 二 残りの刑事記録について開示決定等をする期限
(第三者に対する意見書提出の機会の付与等)
第14
- 1 開示請求に係る刑事記録に国の機関及び開示請求者以外の者(以下この条において「第三者」という。)に関する情報が記録されているときは,保管機関は,開示決定等をするに当たって,当該情報に係る第三者に対し,開示請求に係る刑事記録の表示その他規則で定める事項を通知して,意見書を提出する機会を与えることができる。
- 2 保管機関は,第三者に関する情報が記録されている刑事記録を第7の2の一ロ,第7の2の二ただし書,又は第9の規定により開示しようとするときは,開示決定に先立ち,当該第三者に対し,開示請求に係る刑事記録の表示その他規則で定める事項を書面により通知して,意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし,当該第三者の所在が判明しない場合は,この限りでない。
- 3 保管機関は,前2項の規定により意見書の提出の機会を与えられた第三者が当該刑事記録の開示に反対の意思を表示した意見書を提出した場合において,開示決定をするときは,開示決定の日と開示を実施する日との間に少なくとも2週間を置かなければならない。この場合において,保管機関は,開示決定後直ちに,当該意見書を提出した第三者に対し,開示決定をした旨及びその理由並びに開示を実施する日を書面により通知しなければならない。
(開示の実施)
第15
- 1 刑事記録の開示は,文書又は図画については閲覧又は写しの交付により,電磁的記録についてはその種別,情報化の進展状況等を勘案して規則で定める方法により行う。ただし,閲覧の方法による刑事記録の開示にあっては,保管機関は,当該刑事記録の保存に支障を生ずるおそれがあると認めるときその他正当な理由があるときは,その写しによりこれを行うことができる。
- 2 開示決定に基づき刑事記録の開示を受ける者は,規則で定めるところにより,当該開示決定をした保管機関に対し,その求める開示の実施方法その他規則で定める事項を申し出なければならない。
- 3 前項の規定による申出は,第11第1項に規定する通知があった日から30日以内にしなければならない。ただし,当該期間内に当該申出をすることができないことにつき正当な理由があるときは,この限りでない。
- 4 開示決定に基づき刑事記録の開示を受けた者は,最初に開示を受けた日から30日以内に限り,保管機関に対し,更に開示を受ける旨を申し出ることができる。この場合においては,前項ただし書の規定を準用する。
(手数料)
第16
- 1 刑事記録の開示を受ける者は、規則で定めるところにより、実費の範囲内において、謄写に要する費用を納めなければならない。
2 保管機関は,経済的困難その他特別の理由があると認めるときは,規則で定めるところにより,前項の費用を減額し又は免除することができる。
第3章 不服申立て等
(訴訟の管轄の特例等)
第18
- 1 開示決定等の取消しを求める訴訟及び開示決定等に係る不服申立てに対する裁決又は決定の取消しを求める訴訟(次項において「刑事記録公開訴訟」という。)については,行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)第12条に定める裁判所のほか,原告の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所(次項において「特定管轄裁判所」という。)にも提起することができる。
- 2 前項の規定により特定管轄裁判所に訴えが提起された場合であって,他の裁判所に同一又は同種若しくは類似の行政文書に係る刑事記録公開訴訟が係属している場合においては,当該特定管轄裁判所は,当事者の住所又は所在地,尋問を受けるべき証人の住所,争点又は証拠の共通性その他の事情を考慮して,相当と認めるときは,申立てにより又は職権で,訴訟の全部又は一部について,当該他の裁判所又は行政事件訴訟法第12条に定める裁判所に移送することができる。
第4章 補則
(開示請求をしようとする者に対する情報の提供等)
第19
- 1 保管機関は,開示請求をしようとする者が容易かつ的確に開示請求をすることができるよう,当該保管機関が保有する刑事記録の特定に資する情報の提供その他開示請求をしようとする者の利便を考慮した適切な措置を講ずるものとする。
- 2 法務大臣は,この法律の円滑な運用を確保するため開示請求に関する総合的な案内所を整備するものとする。
(施行の状況の公表)
第20
- 1 法務大臣は,保管機関に対し,この法律の施行の状況について報告を求めることができる。
- 2 法務大臣は,毎年度,前項の報告を取りまとめ,その概要を公表するものとする。
(保管機関の保有する情報の提供に関する施策の充実)
第21 政府は,その保有する情報の公開の総合的な推進を図るため,保管機関の保有する情報が適時に,かつ,適切な方法で国民に明らかにされるよう,保管機関の保有する情報の提供に関する施策の充実に努めるものとする。
(政令への委任)
第22 この法律に定めるものの他,この法律の実施のため必要な事項は,政令で定める。
附則
(刑事確定訴訟記録法の廃止)
第1 刑事確定訴訟記録法は,この法律施行の日において廃止する。
(経過措置)
第2 刑事確定訴訟記録法の廃止の日において刑事記録の開示の請求のあったものについては,この法律によって処理する。