裁判所の保有する情報の公開に関する法律案

2000年6月15日
社団法人 自由人権協会

  1. はじめに

     現在、内閣に設置されている司法制度改革審議会において、司法に関する情報公開・提供のあり方が一つの大きなテーマになっている。同審議会によると、本年秋に中間報告を公表し、国民の意見を聴取した上で、最終報告をまとめるとのことである。

    ところで、国の情報公開法の立法運動に早くから取り組んできた自由人権協会は、現在、残された課題である裁判所、国会の情報公開を推進すべく活動をしているが、上記審議会の動向も見据えて、このたび裁判所の情報公開法案を策定することになった。

  2. 法案作成にあたっての方針

     現実に早期制定可能な法案を作成するという方針の下、本法案を策定した。したがって、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」)には当協会として見直しを求めるべき点もあるが、同法の条文で、裁判所情報公開法に踏襲できるものは、なるべく同じ内容の規定を置いた。

  3. 対象機関、対象文書の特定

    対象機関は、裁判所法に規定された機関、すなわち、最高裁判所および高裁、地裁、簡裁、家裁並にその支部を含んだ全ての裁判所のほか、司法研修所、裁判所書記官研修所、家庭裁判所調査官研修所および最高裁判所図書館となる。

    対象文書は、司法行政に係わる公文書であり、裁判所で扱う事件に関する文書は対象とならない。これらの文書の公開については各訴訟法、規則等に従うこととなる。ただし、国民の参考となるべき民事刑事事件の判決文については、情報提供施策の一環として、全文をインターネット上で公表することとした。

  4. その他、裁判所情報公開法における変更点  

    その他の規定は、おおよそ情報公開法の規定と同様とした。審査会に関する規定なども情報公開法の趣旨をそのまま生かして定めた。非公開処分等についての不服申立て(最高裁判所長官の処分については異議申立て、それ以外の者による処分については審査請求)を、最高裁判所に設置する裁判所情報公開審査会に諮問することとした。このことが、別途非公開処分取消訴訟等を審理する裁判官の裁判権に不当な影響を及ぼすことがないか、議論がありうるところであるが、情報公開条例の非公開処分等を情報公開審査会が比較的有効に機能していることや、裁判所情報公開審査会委員を国会の同意案件として公正な人選を期することにしたことに照らし、問題はないと判断した。この他でも、そのまま規定できない点についても、情報公開法の規定の趣旨を生かし、文言を工夫して準用した。たとえば、事案の移送に関する規定(第12条)は、請求を受けた裁判所が移送することのある機関として、他の裁判所の外、他の行政機関を規定した。

  5. 最後に

     今回は、法文自体には、取り入れることができなかったが、今後、自由人権協会としては、非公開処分等の取消訴訟においては、民事陪審制度の導入を一つの課題として研究したい。このように考えるにいたったのは、本法案の策定にあたって、現在の裁判手続きで取消訴訟を行って、果たして公平な判断が出来るのかという議論の結果である。すなわち、行政機関の決定等に対する取消訴訟と異なり、裁判所等の判断に対して、訴訟を提起する場合、通常の訴訟手続に従ったのでは、判断権者が純粋な公平な第三者と言えるか疑問が残る。また、実際上も、たとえば、最高裁判所長官を相手とする取消訴訟を通常の行政訴訟手続によって下級裁判所の裁判官が審理を行う場合、原告に有利な判断を行うことには相当な抵抗を感じるものと言える。そこで、陪参審制の導入により、民意を直接反映させながら、訴訟手続を行うことも一つの方法と考えられる。具体的な規定の作成には至らなかったが、将来的には、行政訴訟等への陪参審制度の導入も検討したい。

凾ヨの陪参審制度の導入も検討したい。